データドリブン化の加速のために必要な分析ツールの導入。だが、「どのような分析人材を育てたいか」という明確な目的・目標を持たないと、ツールの活用が進まず無駄になる可能性も高い。今回は、東日本旅客鉄道でデータマーケティング部門を率いる渋谷直正氏がまとめた、一般的なビジネスパーソンが目指すべき目標とそれに必要なスキルセットを公開する。

データ分析のスキル習得には、様々なハードルがある。一般的なビジネスパーソンがまず目指すべきものと得るべきスキルセットとは(写真/Shutterstock)
データ分析のスキル習得には、様々なハードルがある。一般的なビジネスパーソンがまず目指すべきものと得るべきスキルセットとは(写真/Shutterstock)
本日の「データドリブン」のツボ!
  • ゴールから逆算して教育計画を立てないと、ツール導入が無駄になる可能性も
  • 「プログラミングや数学の専門知識が不要」な領域をまずはゴールに設定
  • BAツールの活用ハードルは意外に高い。だからこそ、身近な例で効果を体験させる
前回(第8回)はこちら

 分析ツールの導入には、社内のデータドリブンをどのように進めたいのかという「目標」と、それを実現させるための分析リテラシーの「教育計画」をセットで考えなければいけない。そうしないと、目指すべきゴールにふさわしくないツールを導入することになりかねない。せっかくツールを導入しても、使われずに無駄になってしまう可能性があるからだ。今回は、分析リテラシー教育をどう進めていくのかを解説していく。

 連載の第4回では、企業全体をデータドリブン化するには、職人的な専門職ではなく、“自分で分析できる一般ビジネスパーソン”のイメージである「シチズンデータサイエンティスト」を育てることが重要と話した。この分析人材を一般の事業会社で育てていくためのスキルセットについて、今までの経験からたどり着いた一つの答えが以下の図1だ。

【図1】分析レベルと必要なスキルセット
【図1】分析レベルと必要なスキルセット
上にいくほど数学やプログラミングなど、専門的な領域のスキルが必要になっていく。SPSSはIBM社の、SASはSAS社の、統計解析ソフトウェアの製品群。DataRobotは専門知識がなくてもAIによるデータ分析や数値予測などができるプラットフォームのこと

 シチズンデータサイエンティストは、Excelなどで業務を行うビジネスパーソンを対象とするので、一番下の層が出発点になる(1)。そしてExcelの延長線上として前回の第8回で述べた、可視化・集計ツールとしてのBI(Business Intelligence)ツールを使えるようにすることが最初の一歩となる(2)。

 ここまでは特に専門的な知識やスキルが必要ないため、普通のビジネスパーソンでも環境(データマートとBIツール)が整えば、容易に取り組むことができる。実際に、近年は多くの企業でビジネスパーソンのBIツールの利用が急速に普及してきている。

2層目へ上がることは難しくない。課題はいかに広げるか

 この(2)のレイヤーで難しいのは、ツールの使い方ということより、広く全社員に普及させるという社内浸透のほうだろう。定期的な教育、マニュアル整備はもちろんだが、連載の第7回で述べたように、最初は一部の現場での小さな成功事例を共有しながら徐々に草の根的に広げていくことも効果がある。そのためには、ツールを使わせることよりも、現場の課題を見つけることを優先してみよう。

 社内での分析事例勉強会や社内分析コンテストなどを開催し、現場ごとの成功体験を共有し、「仲間を増やしていく」感覚で普及を進めている会社もある。BIツールは、ツールや環境を用意することよりも、こうした地道な啓蒙・普及活動が何よりも肝要なのである。図1がピラミッド状になっていることからも分かるように、(2)の層の人材をできるだけ多く社内に増やしていくことが、それより上の層の育成人数に大きく関わってくる。まずは分析の入り口の人数を増やすのだ。

 近年は(2)のレイヤーまで到達する企業が増えてきている印象だが、問題はここから先。つまり、BA(Business Analytics)ツールを使った予測モデリングや統計解析を手掛けるかどうかだ。

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