小さな分析事例が積み上がり、データドリブン化の機運が高まってきたら、本格的に分析ツールの導入を検討する段階に入る。だが、ツール選びは、「どのような分析人材を育てたいか」ともリンクしており、そう簡単ではない。今回は、ツールの現状と選び方を、東日本旅客鉄道でデータマーケティング部門を率いる渋谷直正氏が解説する。

分析ツール選びは全社データドリブン化に向けて避けては通れない道(イラスト/Shutterstock)
分析ツール選びは全社データドリブン化に向けて避けては通れない道(イラスト/Shutterstock)
本日の「データドリブン」のツボ!
  • 「BI」か「BA」か、分析ツールは大きく2種類に分類して考える
  • Excel集計の代わりに、BIツールの導入で現状把握の手間を簡略化
  • BAツールは「統計解析系」と「機械学習系」の2つに分類できるが、違いを理解してから選ぶべき

前回(第7回)はこちら

 第7回で全社をデータドリブン化するために必要な“道具”として分析ツールに触れた。分析ツールは数多存在するので道具単独で考えてしまいがちだが、本来は分析教育とセットで考える必要がある。つまり「どういう分析人材を育てたいのか」という目標に応じて、それにフィットするツールを全社に計画的に導入していくべきである。

 人材育成(教育)の話に入る前に、今回は分析ツールにはどういうものがあり、何ができるのか、その違いや目的について分かりやすく解説していく。データをいじったことがない人にとっては、多少難易度が高い話になるが、ツールを活用していく上でも知っておくことは重要なので、ぜひ読んでもらいたい。

 ひと口に分析ツールといってもさまざまなものがあるので、それらを改めて俯瞰(ふかん)しておこう(表1)。世の中で分析ツールといわれているものは、BI(Business Intelligence)ツールと、BA(Business Analytics)ツールに大きく分けられる。

表1 分析ツールの分類
表1 分析ツールの分類
BIツールは現状の把握に最適。BAツールは、より細かい要因の探索や予測などに用いられる ※Kagglerとは、企業や大学といったホストが提供する題目に対して構築モデルの精度を競い合うプラットフォーム「Kaggle」を積極的に利用する人のこと

BIツールの全社導入で、「データを見る」ことを誰でも当たり前に

 BIツールは集計や可視化(集計表をつくったり、グラフを描いたりすること)、リポートやダッシュボードなど、いわゆる現状の「見える化」(現状把握)に使われる。

 機能自体に高度なものはなく、専門知識も必要としないので、Excelのピボットテーブルやピボットグラフと同等と考えればいい。その点では、Excelを使いこなせればBIは不要とも言えなくはないが、Excelでは大量*1のデータは扱えないし、ダッシュボード化して共有するなどの機能はBIが優れている。単に集計結果を見栄え良くまとめる(ビジュアライゼーション)ために使うのではなく、大量のデータから探索的に知見を引き出す道具として使ってこそBIツールの真価が発揮される。

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