データ分析人材の候補を見つけたら、次に何をすべきか。まずは、小さな成功体験をいかにつくるかが、企業全体をデータドリブンに変えていく近道だと、デジタルガレージCDO(チーフデータオフィサー)の渋谷直正氏は指摘する。今回は、どのようにして小さく始めるのか、具体的な施策について説明をしていく。
- 組織をデータドリブンに変革するには、「小さく始める」のが近道
- 実利よりも、分析をしたことでの効果を示すことに重きを置く
- まず簡単かつ有効な「A/Bテスト」で分析の成功事例をつくる
- 基礎的で簡単な予測モデルをつくってみるのも手
社内のシチズンデータサイエンティスト候補を見つけ出した後は、実際にデータ分析のプロジェクトを始動することになるだろう。だが、いきなり全社へ号令をかけても、一筋縄ではいかない。では、データドリブンのスタイルを社内に広げていくために、どのようにスタートを切ればいいのか。
それは、一言で言えば、「小さく始める」ことだ。
過大な投資をせずに、今あるリソースを使って小さな業務改善を実行するということ。ただし、その際は分析や数字に基づく成果であることを、社内に理解してもらう必要がある。実利があるかどうかよりも、分析をすると何らかの効果が得られるということを実証することに重きを置くのが最大のポイントだ。こうした小さな一歩、そしてその成功体験が、データドリブンを拡大させる端緒になる。そのために有効なやり方を具体的に2つ紹介しよう。
(1) 成果が見えやすいA/Bテストから始める
効果を示しやすい1つが、A/Bテストである。A/Bテストは、いわばお客様を使った社会実験のようなもので、ある施策を実施する際に、その被対象者(一般にはお客様)をA群とB群にランダムに分け、それぞれに同時に別の施策を実施し、その効果の差分を測定するものだ。新薬の効果を検証する際に、A群の人に新薬を、B群の人に既存薬(あるいは効果のない疑似薬)を投与し、一定期間経過後に効果の差分を見るのと同じ手法である。
ウェブマーケティングの世界では、A群とB群で異なるバナーを表示して差を見るなど最近はよく行われている。A/Bテストはロジックが明快で上層部にも理解されやすく、結果を数字で示すことが容易なので、ウェブに限らず新しいことを始める部署であっても成果を示しやすい。
加えて、社内で問題提起はされているものの、いまだに結論が出せていない問題に示唆を与えるという生かし方も可能だ。このような問題に対処することは社内からも注目されやすく、データドリブンの可能性を社内に浸透させるいい機会になる。
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