
国内のワイン関連メーカーが、この2、3年でワインの新たな楽しみ方を次々に提案している。国内最大手のメルシャンは、長野県上田市に「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」をオープン。広大なブドウ畑を生かした世界標準の「ワインツーリズム」を目指す。キッコーマンは、原酒の混合で新たなワインを造れるユニークなサービスを展開中だ。
※日経トレンディ2021年3月号の記事を再構成
北陸新幹線の上田駅からタクシーで約35分。標高約650メートルの高台に東京ドーム約6個分の面積のブドウ畑が広がる。ワイン国内最大手のメルシャンが2019年に開いた「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」だ。まだ真新しいこのワイナリーが20年7月、世界の優れたワイナリーを選ぶ「ワールド・ベスト・ヴィンヤード 2020」という賞で第30位に選ばれた。上位には米国の「ロバート・モンダヴィ」や「オーパス・ワン」、フランスの「シャトー・マルゴー」など各地の名門ワイナリーが名を連ねる。アジアのワイナリーで選ばれたのは初の快挙だった。
椀子ワイナリーが評価されたのは、ワインの実績とともに観光スポットとしての眺望の魅力がある。本州のワイナリーは住宅地とブドウ畑が隣接する地域も多いが、椀子ワイナリーの畑は地続きで約30ヘクタールあり、遠くに蓼科山や浅間山を望むことができる。
広大な畑を生かして8種類ものブドウが栽培されており、畑を150分かけて歩きながら「シャルドネのブドウを見つつ、椀子シャルドネワインを味わう」といった飲み比べが可能な珍しいツアーも実施。これも評価を押し上げた。
メルシャンは、この地に03年にブドウ畑を作り、19年にワイナリーを整備した。建設当初から、ワインと旅行を組み合わせる「ワインツーリズム」は意識したという。特に参考にしたのは、米国カリフォルニア州のナパバレーだ。ナパバレーは、ワイナリーだけでなく温泉(スパ)やゴルフ場も充実しており、観光客が数日間滞在して楽しめる一大観光地区となっている。「長野県の東信地区は多くの温泉郷や軽井沢など、もともと観光施設が豊富。ワイナリーが観光資源の一つに加わることで周辺が潤うことを目指した」(メルシャン シャトー・メルシャン チーフ・ブランドマネージャーの神藤亜矢氏)。
椀子ワインが人気だったこともあって、19年9月のオープンからコロナ禍の前までは年間3万人の目標を上回るペースの訪問客があった。20年7月に路線バスが通り、公共交通機関で訪問しやすくなったのもプラス材料だ(路線バスは、しなの鉄道大屋駅発で約15分。緊急事態宣言中はツアーの新規受け付けや対象地域からの訪問を一時的に停止している)。
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