
世界のクラフトビール人気をけん引しているHazy IPAで、ビール通をうならせているブルワリーが「WEST COAST BREWING」だ。トロピカルフルーツや柑橘類を思わせる香りは、日本で主流のラガービールのそれとは全く異なる。瞬く間に“日本のHazy IPA”の象徴となるまでに至った裏には、緻密な戦略があった。
※日経トレンディ2021年3月号の記事を再構成
IPA(India Pale Ale)にも様々なスタイルがあるが、その中でも今、世界のクラフトビール人気をけん引しているのがHazy IPAだ。その幅は実に広いが、基本的に濁ったような見た目が特徴で、ホップをふんだんに使うIPAでありながら、苦みはさほど強くなく、口当たりも滑らか。果物で強く香り付けしてフルーティーにしたものや、乳糖を使ってかなり甘めに仕上げたビールもある。
Hazy IPAの人気は2010年代半ばに米国で火が付き、世界に広がった。日本ではまだ、クラフトビールファンの間でしか知られていないという存在ではないだろうか。ホップをふんだんに使ったビールの魅力が存分に味わえるのに、飲みやすいという“いいとこ取り”ができるため、ビールを普段飲まない人も巻き込んで、一気に人気のスタイルになり得る。いち早く知っておけば、人に自慢できる注目のスタイルだ。
19年の設立からわずか2年足らず。早くもこのHazy IPAを武器に、ビール通をうならせているブルワリーがある。JR静岡駅から2駅の用宗駅のほど近く、用宗みなと温泉にブルワリーを構えるWEST COAST BREWING(WCB)だ。魅力は強烈なホップの香りと強炭酸。ビアレストラン「クラフトビアマーケット」を展開するステディワークスの田中徹社長は、その味について、「あえて日本向きにしていない味。本場の米国で飲んだHazy IPAと比べても遜色ない品質の高さ」と言う。
「FULL HOP ALCHEMIST V13」を飲むと、パイナップルやマンゴーなどのトロピカルフルーツや柑橘類を思わせる香り。口に含むと、ホップの苦みはほどほどに、フルーティーな優しい甘みも広がる。複雑で濃厚な味わいは、日本で主流のラガービールとは全く異なる。初めて飲む人にとってはビールの常識を覆される、Hazy IPAの魅力が存分に感じられる1本だ。
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