激しいシェア争いを繰り広げるキリン、アサヒ、サントリー、サッポロの大手ビール4社。毎年のように投入される新製品の味づくりを開発現場で決める立場にある4人が一堂に会した。自社のビールこそが最高だと考え、未来もそうであるように日々おいしさと格闘する彼ら。異例の“共演”となるライバルが、互いの商品への見方や、ビールをもっとうまくするための挑戦を語り合う。

※日経トレンディ2021年3月号の記事を再構成

サッポロビール・新価値開発部マネージャー・新井健司氏(写真画面内右)、サントリービール・商品開発研究部部長・梅澤祐輔氏(写真画面内左)、アサヒビール・イノベーション戦略部部長・藤本健氏(写真手前右)、キリンビール・マーケティング部部長・マスターブリュワー・田山智広氏(写真手前左)

──この10年間で、ビール開発の現場ではどんなイノベーションが起こったのでしょうか。

キリンビール:田山 「ビール」「発泡酒」「新ジャンル/第3のビール」と、日本には原料の麦芽の比率によって3タイプの商品がある。これは酒税法上、それぞれに厳格な基準が設けられているためで、その限られた条件下で、国産大手ビール会社4社は切磋琢磨してきました。

 とことん味を追求し続けた結果、商品開発の過程で培った数え切れないほどの技術には、いずれも正直すごいものが詰まっている。だからこそ、誇れるほど進化したと自負しています。

サッポロビール:新井 全く同感です。ここ数年を振り返ると、ビールの4大原料である「麦芽」「ホップ」「酵母」「水」の持つ力に、改めて目を向ける良い機会となりました。

 特に酵母。発酵では麦芽の栄養分を酵母が“食べる”んですが、ビール醸造ではリッチな栄養を持つ麦芽を多く使います。ですから、ある意味おいしいビールができるのは当たり前だったんですよね。発泡酒や新ジャンルを手掛けたからこそ、酵母の働きに向き合う必要があった。

アサヒビール:藤本 そうですね。酵母に与えられる栄養が少ないといった基本的に制約が多い中で、それをうまく使って、しかも工場で大量生産できるように工夫しなければ、でしたよね。

 弊社は全国に8つのビール工場があるんですが、季節ごとの気温の変化や土地ごとに条件が微妙に変わりますから、A工場でできたアレンジがB工場でうまくいくとは限らない。とにかく365日、どの工場でも同じ味を作る技術を磨き続けた。それが当たり前にできているのは日本のビールメーカーぐらいではないでしょうか。

サントリービール:梅澤 1つを常に自己点検していく中で、発見もありませんでした? 例えば弊社の場合、おいしさを探究する中で伝統的な製法を改めて見つめ直しました。耐久性に優れたステンレスの仕込み釜を使うのが現在主流ですが、大昔はウイスキー蒸溜所のように銅製の釜を使っていました。改めて試すと、銅釜での煮沸は香ばしさとコクを実現できることが分かったんです。

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