無人店舗/自動接客の虚実

売り場面積わずか1坪。「世界最小」をうたう靴販売店が、羽田空港に登場した。AR(拡張現実)を使った試着体験と3Dスキャナーによる計測結果を組み合わせ、来店客一人ひとりにぴったりの1足を提案する。在庫を持たずに、無人でも営業できるニューノーマル時代の店づくりを目指し、短期間で修正と実装を繰り返す「アジャイル開発」を取り入れて進化を重ねていた。

羽田空港第1ターミナルに無人の靴販売店が開業した。売り場はわずか1坪だ
羽田空港第1ターミナルに無人の靴販売店が開業した。売り場はわずか1坪だ

 靴の“履き心地”をARで確認し、気に入ったら両足データのスキャンに進む。計測時間は約10秒。最もフィットするサイズが、目の前のディスプレーに映し出され、表示されたQRコードをスマートフォンで読み取って注文すれば、後日自宅まで配送される。デザインやサイズが合わなかった場合は、無料で返品可能だ。

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 場所は、羽田空港第1ターミナル。5階の商業施設「THE HANEDA HOUSE」の一角に2020年12月17日、これまでにない靴売り場がオープンした。面積は1坪。靴選びから試着、購入までの一連の流れを完全非接触で体験できる、まさに靴に特化したDX(デジタルトランスフォーメーション)店舗である。

【特集】無人店舗/自動接客の虚実

 販売しているのは、日本初上陸となる韓国発のメリノシューズブランド「Paper Planes(ペーパープレーンズ)」。素材に高級羊毛のメリノウールを100%使い、丸洗いできるのが特徴だ。仕掛けたのは、フリックフィット(東京・目黒)。「最初から1坪サイズ、3平方メートル程度に収めようと考えていた」と語るのは、廣橋博仁CEO(最高経営責任者)だ。

靴の“試着”から購入までの流れ。その場で受け取るのではなく、後日、自宅に配送されるようにすることで在庫レスを実現した
靴の“試着”から購入までの流れ。その場で受け取るのではなく、後日、自宅に配送されるようにすることで在庫レスを実現した

 従来の靴売り場ではまとまったスペースが必要だった。「靴はサイズが多く、在庫を確保するためにバックヤードを食う。数ある商品から選ぶのも一苦労で、試着そのものに時間がかかるのも課題だった」(廣橋氏)。一方、EC(電子商取引)サイトでは、実際に履いたときの見た目やフィット感を確認できない。それならば、商品を絞り込んだ上で、試着そのものをバーチャル化したらどうかと考えた。実店舗とEC店舗の双方の課題解決を図ったのである。

 フリックフィットは15年の創業時から、3次元(3D)の画像解析技術を千葉大学と共同研究してきた。米インテルの3次元カメラ「リアルセンス」を搭載した3Dフットスキャナーを開発し、1万数千件に及ぶ足型データと靴の内寸データを収集。独自のAI(人工知能)アルゴリズムと組み合わせ、計測した足型に最もフィットする靴を提案するレコメンドエンジンを生み出した。計測データはすぐにiPadに転送され、いつでも呼び出せる。この技術を百貨店などの靴売り場に提供し、接客を支援してきた。

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