
デザイナーとクライアントの意思疎通が難しいのは、それぞれの立場が異なるからだろう。デザイナーは、どちらかといえばアーティスティックに考えがちだが、クライアントはビジネスの視点で考える。デザイン的に素晴らしいものが、ヒット商品につながれば互いにとって喜ばしいが、うまくいかない場合も多い。
デザイナーとクライアントを同じ目線にする
例えばデザイン的に素晴らしくても生産コストが高ければ、売れる市場は限定される。デザイン経営の時代は、デザイナーとクライアントの共創は必須。だが、互いの方向性が異なれば、いつまでも交わることがない。どうすべきか。
【第2回】 世界観のベースは定期会議 鈴廣かまぼこのデザイン経営
【第3回】 河合塾の新規事業 デザイナーはパートナー、売り方まで考える
【第4回】 「もう契約更新しない」 デザイナーに突き放された経営者の覚醒
【第5回】 全社員巻き込みリブランディング 企業の存在意義から見直す
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1つのヒントがある。公益財団法人 東京都中小企業振興公社が、2020年11月から21年2月までの10回で開講した「デザイン経営スクール」だ。約20人が参加しており、座学やワークショップを中心とするなど、どこにでもありそうな講習会に見える。だが、参加者はクライアントが10人で、デザイナーが10人。互いに面識はなく、スクールで初めて顔を合わせたクライアントとデザイナーが、チームとなってデザイン経営を学ぶのだ。クライアントとデザイナーが同じ目線でデザイン経営を学べば、それぞれの立場が理解でき、意思疎通もスムーズにいくだろう。
カリキュラムを見ると、「デザイン思考」の考え方や内閣府が作成した「経営デザインシート」の作り方、さらに「ブランディング」とは何か、「イノベーション」とは何か、「マーケティング」や「SDGs」(持続可能な開発目標)といったテーマが並んでいる。1つのテーブルに2人のクライアントと2人のデザイナーが座り、講義を聴いたり、ワークショップではディスカッションを行ったりしている。
例えば20年12月11日の4回目はSDGsがテーマ。講師はゲーム形式でさまざまな課題を与え、デザイナーとクライアントがチームとなって解決策を話し合う。他のチームも巻き込みながら新たな解決策を探るなど、遊びながら学べるようだ。そこにはデザイナーとクライアントの関係はなく、1つの課題に向かって互いに知恵を絞ろうとする「ワンチーム」の姿があった。
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