デザイン経営 成功への道

ニューズピックス(東京・港)は銀座に複合施設「NewsPicks GINZA」を2020年7月に開設し、KDDIは9月に銀座にコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」をオープンした。コンペによって両プロジェクトを受注し、手掛けたのが電通のストラテジックプランナー/アーキテクトの南木隆助氏だ。建築出身ながらデザインだけにこだわらず、クライアントにはソリューション(問題解決)の姿勢で臨むという南木氏に、独自の提案術を聞いた。

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南木 隆助(なんき りゅうすけ)氏
電通 ストラテジックプランナー/アーキテクト
1984年東京生まれ。慶応義塾大学で坂茂ゼミに所属。卒業後、電通に入社。空間設計、展示デザイン、プロダクト、都市ブランディングなどのプロジェクトを手掛ける。主な仕事に、パリのギメ国立美術館で開催された欧州初の魯山人の大規模展示「L’art de Rosanjin」の企画と空間設計。ユーグレナのオフィス、「道の駅とよはし」のクリエイティブディレクション、築地場外のリブランディングなどがある

「デザイナーが、自分がやりたいデザインをクライアントに押し付けるようでは意味がない」

NewsPicks GINZAは、ニューズピックスと東急不動産ホールディングスグループのコラボレーションによって生まれました。スクール施設の「NewSchool」や実験的な店舗の「NewStore」、飲食スペース「NewCafe」で構成しています。南木さんは、どんな提案をしたのでしょうか。

ニューズピックスが2020年7月にオープンした複合施設「NewsPicks GINZA」は、スクール施設「NewSchool」や実験店舗「NewStore」、飲食スペース「NewCafe」がある
ニューズピックスが2020年7月にオープンした複合施設「NewsPicks GINZA」は、スクール施設「NewSchool」や実験店舗「NewStore」、飲食スペース「NewCafe」がある

この案件ではもともと、新しい書店をつくりたいというクライアントの意向がありました。このため、他のデザイン会社は書店の空間デザインを提案していました。しかし私は、書店というビジネス自体に疑問を持ちました。リアルな書店の数は明らかに減少していますから、いくら銀座で書店を開いても、収益を得るのは難しいと判断したのです。

 そこで書店を中心にイベントスペースや店舗、飲食スペースを交えた複合施設としてのビジネスモデルを含めたプロトタイプとして提案しました。こんな企業と手を組んだらどうか、書籍をたくさん並べなくてもAmazonと連携すればいいのではないかなどと、利益を上げるにはどうしたらいいかを考えて提案したのです。そうしたビジネスモデルを考えた上で、どんな空間デザインが最適なのかをプレゼンしました。プロジェクトを進めるなかでビジネスモデルの検討が進み、書店ではなくなりましたが、最後まで一緒にビジネスモデルと空間を考えるパートナーとしての仕事になりました。

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