デザイン経営 成功への道

新しいプロダクトのデザインやブランディングの支援といったデザイナーの役割が、大きく変わろうとしている。クライアント側も、狭義のデザインではなく広義のデザインに期待する場合が少なくない。その好例が、香川県東かがわ市にある1953年創業のレザーバッグメーカーのアーバン工芸と、兵庫県宝塚市にあるデザイン会社のSASI DESIGNの関係だろう。

伝統の革手袋の技術などを生かした「TIDE」(タイド)シリーズ。パッチワークのように、さまざまな革を1つにしてバッグにしている(写真提供/アーバン工芸)
伝統の革手袋の技術などを生かした「TIDE」(タイド)シリーズ。パッチワークのように、さまざまな革を1つにしてバッグにしている(写真提供/アーバン工芸)
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今回の事例

クライアントの課題
独自ブランドを立ち上げることでOEMメーカーから脱却

デザイナーの役割
企業体質変革のため“企業参謀”として経営の基盤づくりへ参画

前回(第3回)はこちら

 アーバン工芸は、革手袋メーカーとして創業したが、75年からバッグを手掛けるようになり、その後はバッグ製造専業となった。国内生産にこだわり、OEM(相手先ブランドによる生産)を主体に多くの企業から依頼を受けている。

 「デザインの力により、これからは付加価値のある自社ブランドを立ち上げ、OEMだけに頼った経営から脱却したかった。また、東かがわの地場産業だった革手袋の技術を生かし、地域を活性化したいという思いもあった」

 こう語るのは、アーバン工芸常務の内海公翔氏だ。創業者の孫で、現社長の長男。東京で就職していたが、2012年に入社した。社員たちとアイデアを出し合い、ブランドづくりを始めたが、外部の専門家と組むことが必要と考え、ブランディングが得意というデザイン会社に声をかけた。

 「新しいブランドをつくるため、当社に伴走してくれる会社を探していた。だが会ってみたデザイン会社は、単に売れそうなデザインや、はやりのデザインを提案しようとするだけ。それらの提案には当社が手掛ける必要性を感じられなかった」(内海氏)

【特集】デザイン経営 成功への道
【第1回】 こんなクライアントは嫌だ! デザイン経営で起こる問題と対処法
【第2回】 世界観のベースは定期会議 鈴廣かまぼこのデザイン経営
【第3回】 河合塾の新規事業 デザイナーはパートナー、売り方まで考える
【第4回】 「もう契約更新しない」 デザイナーに突き放された経営者の覚醒 ←今回はココ
【第5回】 全社員巻き込みリブランディング 企業の存在意義から見直す

独自のビジョンシートで課題を明確化

 そうしたなか、内海氏はインターネットで検索して見つけたSASI DESIGNに興味を持った。17年のことだった。

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