デザイン経営 成功への道

クライアントが立ち上げる新規事業のために、デザイン会社はどこまで支援すべきか。ロゴやプロダクトのデザイン、パンフレットなどのグラフィックだけで終わるべきか、それとも事業の中身まで踏み込んだ提案をすべきか。

河合塾が中高生の「考える力」を養うために推進している「河合塾未来研究プログラム」(ミライ研)のテキスト。自分の現在地から将来を考えるのではなく、自分を取り巻く社会の未来を考え、将来の自分を自分の言葉で語れるようにするのが狙い。このため河合塾はkenma(東京・新宿)と手を組み、テキストやカードなどのツール、プログラムの内容、売り方まで変えた
河合塾が中高生の「考える力」を養うために推進している「河合塾未来研究プログラム」(ミライ研)のテキスト。自分の現在地から将来を考えるのではなく、自分を取り巻く社会の未来を考え、将来の自分を自分の言葉で語れるようにするのが狙い。このため河合塾はkenma(東京・新宿)と手を組み、テキストやカードなどのツール、プログラムの内容、売り方まで変えた
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今回の事例

クライアントの課題
新規事業を刷新するためどこから着手すべきか相談したい

デザイナーの役割
デザインだけではなく新規事業の在り方まで一緒に考える

前回(第2回)はこちら

 デザイン会社のkenma社長の今井裕平氏の立場は明確だ。「当社はクライアントのビジネスパートナーであり、事業についても踏み込むし、新規事業の利益に応じたフィーをもらうようにしている」と今井氏は話す。

 kenmaが支援しているクライアントが名古屋市の大手予備校、河合塾だ。大学受験や小学生・中学生向けの教育事業を展開する他、単なる学習プログラムとは異なる事業を中学・高校生向けに推進している。それがkenmaも加わっている河合塾の新規事業「河合塾未来研究プログラム」(ミライ研)。中高生に考えるスキルを身につけさせることが狙い。社会課題を考え、自分の将来を考え、さらに10~20年後の未来の社会を考える。未来と自分の関係を探ることで、中高生が進路選択などで必要となる「自ら考え、判断する」ための力を得られるようにする。

【特集】デザイン経営 成功への道
【第1回】 こんなクライアントは嫌だ! デザイン経営で起こる問題と対処法
【第2回】 世界観のベースは定期会議 鈴廣かまぼこのデザイン経営
【第3回】 河合塾の新規事業 デザイナーはパートナー、売り方まで考える ←今回はココ
【第4回】 「もう契約更新しない」 デザイナーに突き放された経営者の覚醒
【第5回】 全社員巻き込みリブランディング 企業の存在意義から見直す

どうやって事業を伸ばすか

 未来について考えることに、正解はないだろう。正解がないからこそ、自分なりの価値観や判断基準を持つことが求められる。中高生にとって、特に10~20年後の未来は大人になっている頃だけに、自分を取り巻く社会について考えることで、将来の自分のイメージを具体的に捉えることができそうだ。だが「考える」というプログラムの内容が理解されなかったのか、2016年度からリニューアルもしたが伸び悩んでいた。事業として見直す必要があり、kenmaに相談した。

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