オンライン化した「CES 2021」には、フードテックに関する出展も数多く見られた。ニューノーマル時代の到来により食に対する消費者の考え方も変化する中、関連サービスはどう進化していくのか。書籍『フードテック革命』の共同筆者であるシグマクシスの岡田亜希子氏が注目ポイントを紹介する。
2020年は日本国内においても「フードテック元年」と呼ばれるほど食領域のイノベーションが一気に市場へ展開された年であった。例えば、ニチレイは食嗜好分析プラットフォーム「conomeal(このみる)」をリリース。20年12月のスマートキッチン・サミット・ジャパンでも、味の素が完全栄養食品ベンチャーのベースフード(東京・目黒)との提携を発表した。スーパーやコンビニ、カフェチェーンでも植物肉の商品が店頭に並ぶようになり、フードイノベーションがいよいよ生活者の目にも触れるようになってきている。
海外はどうか。毎年1月に開催されるデジタル技術見本市「CES」は、「フードテック」というテーマは設けていないが、近年フードテック関連の出展が急増しており、その動きを捉えるのには必見だ。IoTとAI(人工知能)を駆使して新しい調理を提案する調理家電のみならず、新食材、レストランテック、アグリテックなど食に関わる展示は多岐にわたる。ヘルスケア&ウェルネス、センサーやロボティクスなど、食の周辺領域で起こっている技術の進化を確認できるのもCESの利点だ。
今年のCESの展示企業を総ざらいして調べたところ、フードテック関連の企業展示は100社強あり、例年CESと同時期に開催されるフードテック領域に特化したプライベート展示会「Food Tech Live(以下FTL)」でも30社あまりが出展していた。
欧米はフードテックイノベーションが日本の4~5年先を進んでいる、というのがこれまでの肌感覚だった。前述したように、日本もフードテックは広がっているものの、CESおよびFTLで各社の展示を見ていくと、海外勢がさらにイノベーションのスピードを上げてきていることが見て取れた。ここからはCES 2021とFTLの展示内容も含め、フードテック進化の3つのトレンドを紹介していこう。
(1)大手とスタートアップの連携でフルスタック化
着実な進化を見せたのは韓国勢だ。韓国LG電子(以下LG)から発表されたのは2ノックで扉が透明になるオーブンレンジ。水を使わないSous-Vide(低温)調理や、油を使わずにフライドポテトなどを調理するAir-Fry機能なども搭載する。これだけだと、ハードウエアの高機能化にしか見えないが、真骨頂は「フルスタック化」(異業種と連携した調理・喫食にまつわる工程の連携)への進化だ。
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