2021年1月11~14日に完全オンラインで開催された家電・技術見本市「CES 2021」。20年までのリアル開催と比べて出展数が半数以下となるなど、規模は縮小となる中、実際の内容はどんなインパクトがあったのか。電通で事業およびイノベーション支援を手がける森直樹氏が分析する。
21年のCESは、1年の技術トレンドを占う世界最大規模のショーを完全オンライン化するという野心的な試みのもとで実施された。正直言って、開催前はオンライン開催でこれまでと同様のインパクトを発信できるのだろうかという懸念を抱いていた。ネット越しにCESに参加し、数々の講演を視聴した今、そんな疑問は吹っ飛んだ。十分なレベルの演出と、これまでにない新鮮な視野と深いメッセージ性を持つカンファレンスであった。
CESを運営するCTA(全米民生技術協会)は、AI(人工知能)、次世代通信の5G、デジタルヘルス、ドローン、ロボティックス、自動車、スマートシティーが注目分野だと説明していた。そんな要素技術のアップデートは、脇役にすぎなかったといってもオーバーではないだろう。報道向け発表会、そして基調講演で発する米国を代表する企業からのメッセージは、パンデミックで加速する変革、環境への責任とサステナビリティー(持続可能性)、社会に対する責任ある行動について、真摯(しんし)に問い直す力強いメッセージだったからだ。
P&Gはマーケ活動で社会的責任を果たす
本格進出から3年目となる米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、チーフ・ブランド・オフィサーのマーク・プリチャード氏が登場。地球規模でパンデミック・経済不況・人種差別・気候変動と、4つの課題が広がっている。そうした中で、20年の記者発表でも提示したコンストラクティブ・ディスラプション(建設的な破壊)が必要となると示し、「消費者体験を再発明することでリーダーとして市場をリードできる」(プリチャード氏)と主張した。
P&Gは、マーケティング企業のリーダーとして、CESではマーケティングコミュニケーションの変革への取り組みを発信し続けているのも特徴だ。20年までも、パーソナライズ、デジタルメディアへの集中、プログラマティック(システムを通じて広告枠を売買する仕組み)への投資などについて紹介をしていた。今回も、そうしたデータとテクノロジーによるメディア領域の変革について語っている。クッキー規制への対応として、パーミッション(ユーザーに同意を得ること)前提の消費者データ収集と独自のプラットフォームによるとエンゲージメント構築や、中国市場におけるプログラマティック広告への集中投資について言及していた。
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