YouTubeを活用した動画マーケティングの最新事例を紹介する本特集。初回はYouTubeをフル活用しているといってよいサントリーだ。同社はブランド認知の拡大と好意度を上げることを目指し、「黒烏龍茶」や「クラフトボス」など話題の動画を筆頭に、20年12月時点で約1200本の動画をYouTube公式チャンネル上に公開して25万人のチャンネル登録者を集める。成功のカギは同社がたどりついた、YouTube上の3つのタッチポイント(顧客接点)を使い分けるマーケティング戦略だ。

サントリーの公式YouTubeチャンネル「サントリー公式チャンネル (SUNTORY)」。登録者数は25万人を超える
サントリーの公式YouTubeチャンネル「サントリー公式チャンネル (SUNTORY)」。登録者数は25万人を超える

 言わずと知れた動画共有サイトの巨人「YouTube」。全世界で20億人のユーザーが利用しており、これは全インターネット人口の約3分の1に当たる数字だ。国内でも2020年9月の時点で6500万人以上が利用する(グーグル調べ)。しかも驚くべきはその利用率で、19年の時点で日本の人口の半数以上がYouTubeを月1回以上利用(ニールセン デジタル調べ)。もはや「YouTubeはマスメディア」との論調も大げさではない状況となっている。

【特集】大研究! YouTubeマーケティング

 こうした数字を見る限り、特に多くの消費者を相手にする企業がYouTube上でマーケティング活動をしないという選択肢はあり得ない。デジタルプラットフォームであるYouTubeにはさまざまな分析ツールや広告メニューが用意されている。仮説を立て、効果を検証し、改善する――いわゆるPDCAを回しながら運用できるのもメリットだ。

 この特集ではYouTube上での動画マーケティングの先進企業を取材し、そのノウハウを紹介する。動画を用いる狙いやYouTubeの具体的な活用法、重視する成功の指標などは企業によって違いがあるため、今回はそれぞれ特徴を持つ4社を選んだ。併せて読めば、YouTubeマーケティングに必要な情報がよく分かるはずだ。

 第1回で取り上げるサントリーは、YouTubeをいわばフル活用する企業だ。YouTube上でマーケティングを実施する場合、一般的に視聴者とのタッチポイント(顧客接点)は「公式チャンネル」「インフルエンサーなどのチャンネル」「広告」の3つとされる。同社がYouTubeをフル活用しているといえるのは、この3つすべてについて万遍なく力を注ぎ、かつ目的に応じて使い分け、同社の商品を楽しむ幅広い顧客層に向けてマーケティングを展開しているからだ。詳しくは後述するが、ブランドや商品の認知拡大、好意度の向上、商品の購入などにつながれば、成功である。第2回のパナソニックは、主に次世代のユーザーである若年層へリーチし、同社商品の購入に向けて比較・検討してもらうためにYouTubeを活用する。YouTube上の動画を見た若年層に「パナソニックの商品を買ってみたい」と思ってもらえるかどうかが、成功の指標だ。そこで、主に若年層に見てもらうための同社の動画制作術に焦点を当てる。

 第3回で取り上げるマウスコンピューターは、全方位に認知を広げ、さらに商品の購入につなげるためにYouTubeを活用する。そこで同社が主に活用するのが、YouTube上の広告だ。広告費を引き下げながら高い効果を上げる同社のYouTube活用術をひもといた。第4回のエン・ジャパンは、社員YouTuberをマーケティングに活用している。企業が伝えたいメッセージを伝える際、社員YouTuberがどれだけ貢献しているかが重要。その現状を明らかにする。

 まずはサントリーからだ。14年に「忍者女子高生」がネット上で話題になり、当時850万回も再生されてから約7年、同社がたどり着いた動画マーケティングの境地を見ていこう。

2014年に公開された「忍者女子高生」。現在は1000万回を超える再生回数を誇る。その斬新な映像と構成は今でもバイラル動画のお手本だ

【動画のメリット】味覚まで刺激できる

 「(動画は)直接的には視覚と聴覚に訴えるものだが、嗅覚、触覚、さらに味覚も左右できるところが大きい」

 サントリーが動画を使ったマーケティングに力を入れる理由を、サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部長の三好健二氏はこう話す。「テキスト+静止画」よりも、音声や音楽、動きを伴う動画のほうが、視聴者の五感すべてに訴えかけられるというわけだ。三好氏は続けて、中でもプラットフォームとしてYouTubeを重視する理由を、「(YouTubeは)アクティブユーザーを数多く抱えており、プラットフォームとして圧倒的に強いから」と説明する。

サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部長の三好健二氏。約19年間、サントリーの宣伝を担当。「-196℃」や「のんある気分」の商品開発にも携わる。15年から現職(写真提供/サントリー食品インターナショナル)
サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部長の三好健二氏。約19年間、サントリーの宣伝を担当。「-196℃」や「のんある気分」の商品開発にも携わる。15年から現職(写真提供/サントリー食品インターナショナル)

 とりわけ飲料メーカーにとって、味覚を左右できるかどうかは重要だ。「味については競合他社も磨いているため違いを打ち出しにくいが、動画であればよりおいしく感じてもらえる、『この味が好きだ』というレベルまで持っていける可能性を秘めている」と三好氏。こうした動画が商品の認知や購入意向につながるのは間違いない。

 このため、サントリーはこれまで、視聴者の五感を動画で刺激しようとテレビCMに力を入れてきた。最近でもクラフトボスのテレビCMで役所広司と堺雅人の“リモートワーク”を再現。多様な働き方を推進するメッセージを表現した。テレビとネットの使い分けについてはどのように考えているのか。

 「テレビCMはサントリーのDNAで大事なメディアであることに変わりはないし、(テレビとネットなど)複数のメディアでの接触機会を増やせば、それだけ購入意向が上がる。テレビでは一定の認知になるまで広告を投入し、ネット、つまりデジタル動画でその補足をする」(三好氏)というのが同社の基本戦略だ。新商品すべてについてデジタル動画を制作するわけではない。「テレビCMはワンメッセージのみしか伝えられない。それ以外の切り口でアプローチしたいときに、よりきめ細かなメッセージを伝えられるデジタル動画をターゲット別に制作する」(三好氏)というわけだ。

 その一方で、三好氏は「Z世代と呼ばれる10~20代は、デジタル広告だけでも十分な認知が取れることが分かった」と分析する。その結果、「まだテレビCMを逆転するには至っていない」としながらも、YouTube動画などデジタル広告の予算は上昇しているという。つまり、同社はYouTubeを使った動画マーケティングを今後も増やしていく可能性が高いのだ。

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