パナソニックがYouTube活用で成果を上げている。綾瀬はるかを起用した動画「Panasonic NEWS FACTORY」シリーズでテキストを大胆に動画に載せるなど、従来にない斬新な手法で新境地を開き、利用者が最後まで見た目安となる完全視聴率の向上などにつなげた。パナソニック流YouTube動画制作術の肝は、米グーグルが提唱した動画活用を成功につなげるための施策「HHH(スリーエイチ)戦略」だ。

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パナソニックの公式YouTubeチャンネル「Panasonic Japan(パナソニック公式)」。登録者数は10万人を超える。家電メーカーとしては上位にランキングしている
パナソニックの公式YouTubeチャンネル「Panasonic Japan(パナソニック公式)」。登録者数は10万人を超える。家電メーカーとしては上位にランキングしている

次の世代の客層にリーチできる

 パナソニック アプライアンス社 日本地域CM部門 コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 メディア戦略課の古長亮二課長は、YouTubeの利点について、「消費者に動画を一番見てもらいやすいプラットフォームであること。特に若年層に見てもらえること」と語る。パナソニックの会員制Webサイト「CLUB Panasonic」のメインの利用者は40~50代以上だが、パナソニックがYouTube上に開設している公式チャンネル「Panasonic Japan(パナソニック公式)」の登録者は20~30代が多い。古長氏は「YouTubeで、次の世代の客層にリーチできるのではないかと考えている」と、同社がYouTubeの活用に力を入れる理由を語る。

パナソニック アプライアンス社 日本地域CM部門 コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 メディア戦略課の古長亮二課長(写真/渡貫幹彦)
パナソニック アプライアンス社 日本地域CM部門 コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 メディア戦略課の古長亮二課長(写真/渡貫幹彦)
【特集】大研究! YouTubeマーケティング
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 そんなパナソニックがYouTube公式チャンネルにそろえた動画の中で今、最も注目されているのが、2019年11月に開始した、女優・綾瀬はるかがパナソニックの社員と共に商品やサービスの魅力をリポートする「Panasonic NEWS FACTORY」シリーズだ。

 音響、AV、生活家電、理美容機器など数多いパナソニックの目玉商品ごとに、「Panasonic NEWS FACTORY」の動画が公式チャンネルにアップされており、とにかく人気が高い。実際、20年に入ったときに8万人強だった公式チャンネルの登録者数が、「Panasonic NEWS FACTORY」のスタートから1年弱で2万人ほど増え、10万人を超えたほどだ。この10万人という数は家電メーカーとしてはかなり多い。古長氏は「新型コロナウイルス感染症拡大でリモートワークが増え、メディアへの接触時間が増えたことなども一因と考えているが、『Panasonic NEWS FACTORY』を始めたことが登録者数の増加に大きく影響している」と語る。

「HHH」戦略を踏襲。現在はヘルプ動画に注力

 この「Panasonic NEWS FACTORY」シリーズは、パナソニックの中では、商品の購入に向けて「比較・検討」を視聴者(顧客)に促すヘルプ動画と位置付けられている。実はパナソニックは、動画マーケティングを展開する際、基本的にはGoogleが提唱した「HHH(スリーエイチ)戦略」を踏襲している。HHH戦略とは、「ヒーロー(HERO)」動画でブランドや商品について幅広い「認知」の拡大を目指し、「ハブ(HUB)」動画で「興味・関心」を抱いた消費者に対し、ブランドや商品を繰り返し想起したり、サイトを訪問したりするようなメッセージを送り、「ヘルプ(HELP)」動画で消費者に対し、購入に向けて商品を選ぶときの「比較・検討」に対する回答を示す──というものだ。

 パナソニックが考えるそれぞれの動画の役割は下図の通りだ。パナソニックは15年にWeb対応の動画広告に力を入れ始めたとき、まずヒーロー動画とハブ動画に 取り組んだ。それらに加え、今回、ヘルプ動画である「Panasonic NEWS FACTORY」の提供も開始した格好になる。

パナソニックの動画マーケティングの基本戦略
パナソニックの動画マーケティングの基本戦略
ヒーロー(HERO)動画、ハブ(HUB)動画、ヘルプ(HELP)動画の狙いをまとめた(パナソニックの資料から編集部が制作)

 パナソニックがヘルプ動画に力を入れ始めたきっかけは、17年に制作した創業100周年記念「Creative!」キャンペーン向けに作った動画だ。綾瀬はるか、遠藤憲一といった宣伝キャラクターやパナソニック社員らが出演する120秒の長尺動画だったためテレビ放送は1回だけ。それでも放送後にSNSで大きな話題となり、ネットで視聴された。改めてパナソニックや商品の認知を拡大させるとともに興味・関心を想起させた。

 古長氏は、「(動画マーケティングは)放送時間が30秒といった尺に制限があるテレビCMがそれまでは中心だったが、ネットでは長い動画でも視聴してもらえることが分かった。今後は(長尺の動画が向いている)商品の特徴を訴求する具体的、実務的な動画のニーズが高まっていると考えた」と語る。つまり、ネットだからこそできる長尺の動画で商品の特徴を訴求すれば、それがヘルプ動画となって、購入に向けて視聴者に比較・検討してもらえると考えたのだ。

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