コロナ禍を機にモノの買い方やモノを選ぶ価値基準が大きく変化している。安心や憧れよりも、共感できるかどうかを重視する人が増えつつある。共感消費にいち早く取り組みコロナ禍でもネット通販が好調な、生活雑貨の中川政七商店(奈良市)の戦略を探るこの連載。最終回は、ビジョンがいかに顧客を巻き込み、新しい価値観を生み出すのか、年明けに発表された新コンセプトから見える共感消費の作り方と、その裏にある危機感に迫る。
【第2回】 まずビジョンありき! 社長が語る中川政七商店、事業戦略の起点
【第3回】 中川政七商店、奈良に初の複合商業施設 店舗戦略に新たな動き
【第4回】 中川政七商店が顧客向け新コンセプト 「共感」を促す仕掛けとは←今回はココ
ライフスタイルよりライフスタンスが大切
2021年が明けてすぐ、中川政七商店のオンラインストアのトップページで、美しい映像メッセージが配信された。四季折々に変化する日本の豊かで美しい自然の風景が幻想的に描かれ、その土地の風土と人に育まれた、工芸を受け継ぐ職人たちの生き生きとした姿が映し出されていた。わずか4分37秒の短い映像は、最後をこう結ぶ。
「100年先の日本に工芸がありますように。日本の工芸が教えてくれる暮らしかた、生きかた。」
このメッセージは、中川政七商店が新たに策定した新コンセプトで、ブランドの顧客に向けて発信された。「ビジョンファースト」を公言し、工芸業界の活性化に取り組んできた同社だが、顧客向けのスローガンは特になかったという。それがコロナ禍によって顧客とのコミュニケーション強化が課題となり、新コンセプトとして表明することになった。
「これまでは、消えゆく日本の工芸を残したいという内なる要求があった。今回はそれを一歩進めて、工芸が残ることが世の中の人にとって何がいいのか、どんなふうに感じてほしいのかを言語化したいという思いがあった」と同社の千石あや社長は振り返る。
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