コロナ禍を機にモノの買い方やモノを選ぶ価値基準が大きく変化している。安心や憧れよりも、共感できるかどうかを重視する人が増えつつある。共感消費にいち早く取り組みコロナ禍でもネット通販が好調な、生活雑貨の中川政七商店(奈良市)の戦略を探るこの連載。第2回は共感消費を生む「まずビジョンありき」の経営姿勢、その仕組みを解説する。
創業300年の老舗ベンチャーの思い
「こんな状況だから赤字でも仕方がないという空気はあるが、我々はそれでは駄目。今、何ができるかみんなで考えてほしい」――。コロナ禍で厳しい状況が続く中、中川政七商店の千石あや社長は全社員にメールで檄(げき)を飛ばした。
生活雑貨の製造小売業(SPA)を展開する同社は、社内デザイナーが企画し、全国800以上の産地メーカーとともに試行錯誤を重ねて商品を開発する。主力ブランド「中川政七商店」のオリジナル比率は約8割。自社工場を持たない同社のものづくりは、産地の作り手なしには成立しない。利益を出し、注文し続けて産地を守ることが、自社の安定経営にもつながるのだ。「そのメーカーでしか作れないものも結構ある。一度途絶えると再現が難しい工芸の技術を守るという使命も感じている」と千石社長は話す。
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