コロナ禍を機にモノの買い方や選ぶ価値基準が大きく変化している。外出自粛が暮らし方や生き方まで考え直すきっかけとなり、安心や憧れよりも共感できるかどうかを重視する人が増えつつある。そうした「共感消費」にいち早く取り組みコロナ禍でもネット通販などで成果を上げている、生活雑貨の中川政七商店(奈良市)にフォーカスし、共感消費を促す仕組みを探った。第1回はコロナ禍で売れたモノについて。

2019年11月、渋谷スクランブルスクエアにオープンした国内最大の旗艦店「中川政七商店 渋谷店」。“日本の工芸の入り口”をコンセプトに、全国800超のメーカーと作った約4000点の商品が並ぶ
2019年11月、渋谷スクランブルスクエアにオープンした国内最大の旗艦店「中川政七商店 渋谷店」。“日本の工芸の入り口”をコンセプトに、全国800超のメーカーと作った約4000点の商品が並ぶ

全店休業後、ECの売り上げが前年3倍に

 奈良で300年続く老舗でありながら、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンの下、工芸業界初のSPA(製造小売業)事業を確立した中川政七商店。全国に直営店60店舗を展開するが、新型コロナウイルスの感染拡大により2020年4~5月の緊急事態宣言の間、全店休業を余儀なくされた。その時点での販路別売り上げ構成は直営店が8割、EC(電子商取引)と卸しが2割。売り上げの大半を担う直営店の休業は大きな痛手となった。

20年4月にオープンした同社初の書店一体型店舗「中川政七商店 奈良 蔦屋書店」。蔦屋書店との協業により、本と雑貨とカフェをミックスした店内でゆっくりコーヒーを飲みながら工芸の魅力に触れられる
20年4月にオープンした同社初の書店一体型店舗「中川政七商店 奈良 蔦屋書店」。蔦屋書店との協業により、本と雑貨とカフェをミックスした店内でゆっくりコーヒーを飲みながら工芸の魅力に触れられる

 その穴埋め役を果たしたのがEC事業だ。休業直後からオンラインショップの利用が増え、20年4月と5月の売り上げは前年比300%で推移。緊急事態宣言解除後も9月が同300%、10月が同250%、12月に入っても同200~300%と飛躍的に伸びている。

 「あの時点ではスタッフの安全を確保し、会社を存続させて雇用を守ることを優先した。ただ、通常の3倍の注文が一気に押し寄せたため、出荷部隊は大変だった。それでも遅延せずに対応してくれたおかげで減収分を補填でき、苦しい時期を乗り越えられた」と、同社の千石あや社長は振り返る。

コロナ禍で売り上げが大幅増となったオンラインストアのサイト。リアル店舗とオンラインのポイントカードを一体化し、より使いやすくなった
コロナ禍で売り上げが大幅増となったオンラインストアのサイト。リアル店舗とオンラインのポイントカードを一体化し、より使いやすくなった

 ネット通販が普及した今日でも、同社は直営店で顧客と直接コミュニケーションをとることに重きを置いてきた。07年にEC事業を立ち上げたのは、定番のオリジナル商品など在庫の多い商品の消化率を上げることと、店舗のない地方の顧客を開拓するためだ。しかしここ数年は、直営店とECの商品構成をそろえることで直営店に近い買い物体験ができるように整備してきたという。

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