今明かされるZOZOのPB失敗の全貌 経験生かし「ZOZOSUIT 2」開発(画像)

「ZOZOSUIT」は着用して写真を撮るだけで、全身が採寸できることで大きな話題を呼んだ。アパレルの新時代を予見させる取り組みとして脚光を浴びたものの、採寸データを基にしたPB(プライベートブランド)は想定の売り上げを大きく下回った。だが、ZOZOは2020年10月に「ZOZOSUIT 2」を発表し、再挑戦する意気込みを見せた。初代ZOZOSUITの失敗理由と事業転換の全貌をZOZOの取締役COO(最高執行責任者)伊藤正裕氏が明かした。

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ZOZOは2020年10月29日に「ZOZOSUIT 2」を発表。デジタル採寸のプラットフォーム創造に再び挑む
ZOZOは2020年10月29日に「ZOZOSUIT 2」を発表。デジタル採寸のプラットフォーム創造に再び挑む
【特集】マーケDX 失敗からの逆転法

 18年10月31日、スタートトゥデイからZOZOへと社名変更をして初の決算発表の場で、前社長の前澤友作氏は釈明に追われていた。その対象はZOZOSUITだ。年間で1000万枚を配布し、PB事業の垂直立ち上げを狙うとぶち上げた。ところが、その売り上げは想定とは程遠いものだった。

 採寸データを基にしたビジネススーツは配送が遅れ、納品実績は売り上げ目標の15億円を大きく下回る5億4000万円にとどまった。PBの不調を受け、前澤氏はZOZOSUITでの採寸を前提とした販売を改め、採寸不要で身長や体重を登録するだけで購入可能にするなど大幅な変更を発表。さらにZOZOSUITを廃止する方針を明らかにした。その後、PB事業は125億円の赤字を計上し、大幅な縮小を迫られた。

旧ZOZOSUIT失敗の最大の理由とは

 旧ZOZOSUIT最大の失敗は何か。そう問うと、伊藤氏は「技術開発、事業の形成、そしてリターンのすべてにおいて急ぎ過ぎたこと」を挙げる。PB事業の垂直立ち上げを目指し、そこから逆算してZOZOSUITの開発を進めたため、開発が極めて短期間になった。「ポテンシャルは高かったはずだが、ゆっくり時間をかけて完成度を高め、顧客とコミュニケーションをすれば、また違った結果だったかもしれない」と伊藤氏は振り返る。

 特に誤算だったのは、改善スピードだ。ネットサービスが主軸のZOZOにとって、新事業やサービスはアジャイル開発が当たり前だった。一定の品質に達したら、まずサービスの提供を開始し、顧客の利用動向から改善点を見つけ、改修することで完成度を高めていく手法だ。ところが服作りではそうはいかなかった。生地や工場の稼働の確保など、リアルの事業だからこそ生じる物理的な障壁があり、オンラインサービスほどスピード感を持って最適化できなかった。AI(人工知能)を活用して、自動で採寸データに合わせた洋服のパターンをひく技術などの開発で自動化した部分もあるが、「それでもマーケットの反応と、工場や生産ラインの改善スピードが合わなかった」(伊藤氏)。

悪評の形成スピードに改善が間に合わず

 その影響を強く受けたのがビジネススーツだ。スーツはカジュアルな洋服以上に緻密な採寸が求められる。ところが提供開始時は採寸精度が不十分だったため、購入者の間でサイズが合わないと不満の声が噴出。メディアでも実際の購入体験を基に、精度の低さを指摘する記事が掲載された。ZOZOは計測ソフトやスーツのパターンを10回以上改修したものの、「評判の形成スピードに改善が追い付かなかった」(伊藤氏)。改善が完了した頃には、すっかりZOZOのビジネススーツは質が低いという認識が出来上がってしまった。もはや立て直しは不可能と判断。小規模で開始し、改善が終わった後で大きく展開していれば、これを防げた可能性はある。ここでも急ぎ過ぎたことが、失敗につながった。

ZOZOSUITに脚光が当たり過ぎて、PBの価値が伝えきれず、測定から購入が想定よりつながらなかった
ZOZOSUITに脚光が当たり過ぎて、PBの価値が伝えきれず、測定から購入が想定よりつながらなかった

 また、PBの価値を伝えるためのコミュニケーションも不足した。「サイズ選びからの解放というメッセージがもっと共感を得られて、顧客の心をつかめると思っていた」(伊藤氏)が、実際には理想とかけ離れてしまった。ZOZOSUITが脚光を浴び過ぎて、PBの価値が伝わりきらなかったことが原因だ。採寸人数は累計200万人を超えたものの、その後に商品を買いたいという層をつくり出せなかった。ZOZOSUITはあくまで計測手段にすぎない。「主役はPBなのにZOZOSUITしか記憶に残らず、ZOZOのデニムパンツは誰も覚えていない」(伊藤氏)。

 ZOZOSUITとPBが一体となった事業計画だったため、PBの失敗によってZOZOSUITが共倒れになってしまった。これも大きな反省点だ。こうした反省点を踏まえてZOZOSUIT 2は開発された。

 「安価で(サイズが)ぴったりな商品がすぐ届く。試着もサイズ選びも必要ない。ほとんどのベーシックな商品は『ZOZOTOWN』で買う。(そうした世界を)2~3年でつくっていく」と語った前澤氏の夢はついえたかのように見えた。しかし、ZOZOの内部では着々と技術を磨き、同時に採寸データを基にした新たな事業モデルへの転換を計画していた。