長期の積み立て投資で成果を発揮する投資信託のベストを発掘すべく、2018年から発表している「日経トレンディ投信大賞」。投信のプロ4人の推薦とデータを基に、2021年の「大賞」「優秀賞」を決定した。今回は、リスク・リターンの水準で分けた3つのジャンルで優れた投信を選定している。まずは、プロ4人に20年の総括と21年の見通しを聞いた。

※日経トレンディ2021年2月号の記事を再構成

前回(第13回)はこちら

 コロナショックで一時急落したものの、11月末には日経平均株価が29年半ぶりに高値を更新するなど株式相場の変動が大きかった2020年。投信も有事の際の実力が浮き彫りになった年だった。そこで今回の「日経トレンディ投信大賞」では、1年間の平均リターンや最大下落率も重視。ローリスクローリターン、ミドルリスクミドルリターン、ハイリスクハイリターンと3つのジャンルを設け、投信のプロ4人の推薦を基に、QUICKのデータを用いて「大賞」「優秀賞」を決定した。

投信大賞選出方法
投信大賞選出方法
4人のプロにリスク・リターンのジャンル別にお薦め投信を挙げてもらい、それぞれに加点。1年・5年・10年平均リターンや、2020年の最大下落率、純資産総額の規模でも加点し、最も得点の高いものを大賞に選出した。データはすべてQUICK調べで、20年11月末時点のもの

 初めに、推薦者である4人のプロに20年の投信市場の振り返りと、21年はどのような投資姿勢を取ればいいのかを聞いた。※投信大賞の結果は次回、次々回の記事2回に分けて掲載

QUICK専務執行役員 リサーチ本部主幹 北澤千秋氏
「日経マネー」編集長、日本経済新聞編集委員、QUICK資産運用研究所長などを経て、20年から現職
楽天証券経済研究所ファンドアナリスト 篠田尚子氏
国内銀行、投信評価会社を経て13年から現職。日本をはじめとする世界各国の投信市場を詳細に分析している
イデア・ファンド・コンサルティング代表 吉井崇裕氏
ファンドアナリスト。投信評価会社、投信運用会社を経て、13年にイデア・ファンド・コンサルティングを設立
ファイナンシャルリサーチ代表 深野康彦氏
ファイナンシャルプランナー(AFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を経て、独立系FP会社に入社後、96年に独立

——20年の投信市場を振り返ると。

北澤 株式相場は20年春に一時3割下落しましたが、ゼロ金利政策など金融緩和に関する各国の対応は素早く、ほぼ1カ月で回復基調に戻しました。以降、「カネ余り相場」と呼ばれる状況が続いています。普通なら、景気回復を先取りすることで相場が上昇していくのですが、今回はコロナ感染拡大の先行きは不透明なままで、景気の回復が鈍い状況でも、金融緩和政策によって世界中に金があふれて相場が押し上げられている。様相はかなり異なっていますね。

篠田 米国のニューヨーク・ダウ(ダウ工業株30種平均)が初の3万ドルを超えるなど、いい意味でサプライズが多かった1年だったと思います。投信に限らずですが、市場の主役は米国株で、軒並み好調。先進国株式も米国に引っ張られる形で成績が好調なものが多かったです。一方、日本株は明暗が分かれた年だったかなと思います。中小型株や、IPO銘柄をうまく取り入れていた投信は大きく伸びていましたね。

深野 米国株の回復が早く日本株が遅れているような感じだったので、海外株式に人気が集中し、国内株から海外株への資金シフトというのが1年間の大きな流れとしてありました。ただ、日本株のアクティブ型投信には非常にいい成績を出したものもあり、個人投資家にとっては灯台下暗しの状態。信託報酬が高いなどの理由で敬遠されがちなアクティブ型投信ですが、コストの不利を上回るパフォーマンスを見せるものを選べば問題ありません。

吉井 コロナショック後、リスクを取ることができたか否かで、投信の明暗は分かれました。例えば「投資のソムリエ」(アセットマネジメントOne)は、相場が下がったところで素早く安全資産に切り替え、その後すぐにリスクを取り、相場の動きとともに右上がりに伸長して安定的にコロナショックを乗り越えています。投資家も同様で、春以降にリスクを取ることができた人は資産を回復している。本来、長期の積み立て投資をしているのであれば相場の変動を気にして逃げる必要はない。逆に下がった時に買い増してもいいと思います。

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