コロナショックで投資の常識が激変した今、2021年の世界経済と株式相場はどうなっていくのか。証券・投資関連の調査業務に38年携わり、現在レオス・キャピタルワークスでストラテジストとして経済予測をする三宅一弘氏に、20年の市場の振り返りと、今後の見通しを聞いた。強気相場が育つ環境になってきているという。
※日経トレンディ2021年2月号の記事を再構成
レオス・キャピタルワークス 運用本部 経済調査室長
――20年の株式市場を振り返って、いかがですか。
3、4月は世界でコロナ感染者が広がり、中国をはじめ各国が移動や外出制限を行ったことで経済が劇的に落ち込みました。しかしその後、夏場ぐらいからは、新規感染者数と経済活動の相関は低下し、コロナと共存姿勢に。感染者数の増加と株価の上昇がパラレルに進みました。各国の政府や中央銀行が過去最大規模の財政出動や、経済対策、金融緩和を行ったからです。特に米国で3月27日に2兆ドルに及ぶ第3弾の経済対策が決まったところが株式相場のボトムになりました。1200ドルの現金給付、週600ドルの失業保険の上乗せなど、非常に手厚い所得補償や失業対策、資金繰りなどあらゆる対策をとったことが、世界の市場の回復に影響しましたね。
リーマンショックと比較されることもありますが、大きな違いは大規模な財政出動が速やかにできたことです。リーマンショックのときは、「なぜ金持ちのために我々の税金を使わなくてはいけないんだ」という批判があり、経済対策や政策が進みにくかったのですが、今回はパンデミックですから。財政出動も金融政策も反対する人が世界的にあまりいませんでした。
――21年の世界経済を見ていくうえで、注目のニュースは何ですか。
1月20日に正式就任するバイデン新政権の内政・外交と、コロナワクチンの接種普及、米中対立の3つですね。民主党・バイデン政権は、共和党よりもさらに追加経済対策に積極的なので、財政出動が思い切った額になるだろうと、株式市場もポジティブ評価をしています。ただコロナが収まって経済が正常化していった場合、法人や富裕層に対する増税や金融規制強化などを打ち出していることから、中長期的には重しになる可能性がある。そこでカギになるのが1月5日のジョージア州上院議員の決選投票です。ここで2議席のうち1つでも共和党が取れば、共和党が上院の過半数となり、上下院の「ねじれ」議会になって民主党の政策が難航する。株式市場から見ると、経済対策はやってくれる一方で、中長期的な増税はできないという“いいとこ取り”になればとの期待があります。
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