コロナ禍に勝つブランディング

マンダムの新型コロナウイルス感染症対策を狙った除菌スプレー「MA-T Pure(エムエーティ ピュア)」が好調だ。男性化粧品ブランドのイメージが強いマンダムが、2020年11月に発売した。なぜ除菌市場に参入したのか。

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20年11月にMA-Tを使用する製品・サービスを展開する事業者のネットワーク「日本MA-T工業会」が発足。MA-T Pureは同工業会認証第1号取得商品。パッケージデザインには日本MA-T工業会のロゴをアレンジして使っている
20年11月にMA-Tを使用する製品・サービスを展開する事業者のネットワーク「日本MA-T工業会」が発足。MA-T Pureは同工業会認証第1号取得商品。パッケージデザインには日本MA-T工業会のロゴをアレンジして使っている

 「当社は『健康・清潔・美を通じてお役立ちする』を企業理念としている。20年の緊急事態宣言後、除菌関連商品が品薄になった状況を見て、デオドラント商品も出している化粧品会社として何ができるかを考えた。そのとき、MA-Tという除菌システムがあると知り、商品化したいと思った」(広報部の奥啓輔氏)

 「MA-T」(Matching Transformation System)とは、「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液」と呼ばれ、除菌・ウイルス不活性化効果と安全性の両立を目指した仕組み。通常はほぼ水に近い状態でありながら、反応すべきウイルスや菌が存在するときに、必要な分だけウイルスなどを攻撃・分解する。アルコールの除菌剤を使ったときのような手肌の荒れや、塩素系の除菌剤特有の臭いなどがなく、乳幼児から高齢者まで安全に使うことができるという。エースネット(東京・港)が開発し、大阪大学と同大発ベンチャーのdotAqua(大阪府箕面市)が攻撃・分解の仕組みの解明と応用化研究を行った。一般社団法人日本MA-T工業会(東京・千代田)もあり、MA-Tの普及などを促進している。

MA-Tの除菌・ウイルス不活性化のメカニズム。水中に溶け込んだ「水性ラジカル」という成分が、ウイルスや菌などがあるときだけ反応して除去する (マンダムの広報資料より)
MA-Tの除菌・ウイルス不活性化のメカニズム。水中に溶け込んだ「水性ラジカル」という成分が、ウイルスや菌などがあるときだけ反応して除去する (マンダムの広報資料より)

オープン開発で除菌市場に新規参入

 マンダムは15年から、大阪大学大学院薬学研究科と「先端化粧品科学共同研究講座」を開講し、産学連携姿勢を強めていた。大阪大学などはMA-T普及のため、複数の異業種が組むオープンイノベーションによる事業化を決定し、20年6月にアース製薬と業務提携してMA-T素材の生産量増大とコスト低下を図り、MA-T商品の開発を狙う企業に供給する態勢を整えていた。

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