サブスクで3万人獲得 日比谷花壇の成功要因は実店舗にあり(画像)

新型コロナウイルス感染症拡大による消費者の価値観、行動の変化にいかに対応するか──。そのカギを探る特集の第3回は、日比谷花壇(東京・港)の花のサブスクリプション「ハナノヒ」。3万人の会員を獲得したブランドの成功要因は、競合他社と違って実店舗で花を受け取ることによる“体験の厚み”だ。

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新型コロナ禍で、花のサブスクリプションサービスが人気。上は日比谷花壇が2020年12月からスタートした「ハナノヒ365days」のイメージ画像
新型コロナ禍で、花のサブスクリプションサービスが人気。上は日比谷花壇が2020年12月からスタートした「ハナノヒ365days」のイメージ画像

 新型コロナウイルス感染症の影響で、自宅に花を飾る若い女性が増えている。外出自粛やリモートワークで自宅にいる時間が増えたことから、「部屋の中に彩りが欲しい」と考えるようになったようだ。全国に約190店舗を構える日比谷花壇(東京・港)によると、花に合わせて飾る観葉植物の人気も上がっているという。ただ花を飾るだけではなく、一歩踏み込んで自分なりの組み合わせを楽しむ人も増えているのだろう。

 花やグリーンが身近になった理由の1つに、毎月定額で一定量の花を購入できる花のサブスクリプションサービスの存在もあるだろう。日比谷花壇や「青山フラワーマーケット」のパーク・コーポレーション(東京・港)といった大手のフラワーショップから、花のサブスク専門の「Bloomee LIFE」を運営するCrunch Style(クランチスタイル、東京・渋谷)まで、さまざまな企業が参入している。それぞれ異なる特徴を打ち出しており、価格も月額1000円程度から1万円前後までと幅広い。

 中でも面白いのが、日比谷花壇の「ハナノヒ」だ。2019年6月にスタートした同サービスの一番の特徴は、「実店舗で花を受け取る」こと。花のサブスクは自宅やポストに直接配送・投函(とうかん)するスタイルが一般的で、実店舗で受け取る形式は珍しい。

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 配送型の花のサブスクは基本的には花の種類や組み合わせは店側にお任せになるが、実店舗で受け取るスタイルのハナノヒには、“選ぶ楽しさ”がある。その日の気分に合わせて赤、白、黄色と異なる色を楽しんだり、今まで知らなかった種類を試したりできる。

 ハナノヒはサービス開始当初から話題となったが、コロナ禍以降、会員数をさらに伸ばしている。21年1月時点で会員数は約3万人に達した。新型コロナウイルス感染症の流行前後で、会員数が約3倍に増加した(20年2月と21年1月を比較)。

 ハナノヒの利用は簡単だ。専用のスマホアプリからプランを購入。店頭でスマホ画面を見せてスタッフにQRコードを読み込んでもらい、対象の切り花を受け取る。プランは6種類で、価格は月額987~1万5878円(税別、以下同)。一番リーズナブルな「ココハナプラン」では、対象の切り花を月6回まで1回1本選べる。上位プランになるほど、選べる切り花の種類や量も増えていく。

 受け取りの対象店舗は、一部の店舗を除外した全国の「HIBIYA KADAN」「Hibiya-Kadan Style」「WONDER FLOWER」 「Reconnel」などのほか、クリエイティブ・フラワー・コーポレーション(大阪市)運営のフラワーショップ15店舗、グループ会社のイーフローラ(東京・港)の加盟店61店舗を加えた全国約170店舗(21年1月18日時点)。

2021年1月時点でプランは6種類で、価格は月額987~1万5878円。一番人気は、手軽に楽しめる「ココハナプラン」。1万5878円の「イコーハナヤプラン」は法人の利用も多いという
2021年1月時点でプランは6種類で、価格は月額987~1万5878円。一番人気は、手軽に楽しめる「ココハナプラン」。1万5878円の「イコーハナヤプラン」は法人の利用も多いという

男性の利用客が約10%に

コロナ禍で、「自宅に花を飾る」という習慣が広がった。SNSに投稿された花のサブスクサービスの画像を見て始めた人も多いようだ。画像は左からココハナ/イクハナプラン、ハナハナプラン、イコーハナヤプランのイメージ
コロナ禍で、「自宅に花を飾る」という習慣が広がった。SNSに投稿された花のサブスクサービスの画像を見て始めた人も多いようだ。画像は左からココハナ/イクハナプラン、ハナハナプラン、イコーハナヤプランのイメージ

 日比谷花壇がハナノヒのサービスを開始した理由は、日常的に、もっと気軽に花を楽しんでもらいたかったからだという。これまでの花は、誕生日や記念日に贈る「特別なギフト」という印象が強く、自分のために購入する人は少なかった。また、「自宅に花を飾ってみたいが、そのためにわざわざ花屋に行くのはハードルが高い」という人も多かったという。

 日比谷花壇のビジネスソリューション事業本部 ホームユース事業推進室 マネージャーの谷真由美氏は、「花や花屋をもっと身近に感じてもらい、気軽に購入できるシステムをつくりたかった」と話す。

 ハナノヒのメインターゲットは、「花に興味はあるが飾ったことがない」「飾り方が分からない」という20~30代の女性。サービス開始後は、40代の女性にも人気が出たという。

 サービス開始後に意外だったのは、女性だけではなく男性も多数利用してくれたこと。利用者の約10%は30~40代の男性で、自分用に契約した人もいれば、配偶者に頼まれて契約した人もいるようだ。会社の昼休みを利用して花を受け取りに来る人も多いという。仕事の休憩時間や、家事の合間など“隙間時間”を活用して利用できるのもハナノヒの魅力だ。

 「配達ではなく『実店舗で受け取る』形式にした理由は、実際に花屋を訪れてより多くの花に触れてほしかったから。店頭に並ぶ四季折々の花々から、季節を感じてほしかった。店頭では、プラン以外の切り花やグリーン、花瓶や花持ち剤などを一緒に購入してくれる人も多く、花への関心を深めてもらえていると感じている」(谷氏)

 実店舗で受け取る形式にしたことで、利用者からは「家にこもりがちなwithコロナの生活を豊かにしてくれた」「リモートワークで部屋に引きこもっていたけれど、ハナノヒのおかげで散歩をする機会ができた」といった声が寄せられるという。新型コロナ禍で気分が落ち込みがちな生活者に、心理的な潤いを提供するというサービスの本質的価値が評価されたのだろう。

 配送型の花のサブスクに比べて、実店舗受け取り型のハナノヒには、花に触れる、花を選ぶ、花を知るといった「体験の豊かさ」がある。これが、競合する他社のサービスと比べた際に、ハナノヒのブランドを特徴付ける大きな要因となっているのは間違いない。

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