
2020年7月にJR東海が打ち出した観光キャンペーン「ひさびさ旅は、新幹線! ~旅は、ずらすと、面白い~」。人混みを避けながら楽しむ新しい旅のスタイルを、「ずらし旅」としてポジティブに発信。withコロナ時代の旅行のあり方をユニークに提案し、共感するファンを獲得。ブランド力向上に結び付けた。関連旅行商品の20年11月の販売実績は、20年8月と比較して約8倍に伸びた。
「旅は、ずらすと、面白い」──そんなキャッチコピーを掲げたJR東海の「ずらし旅」は、2020年5月に緊急事態宣言が解除された後、7月にスタート。定番となっている旅行の場所や時間などを、あえて“ずらす”ことで、混雑を回避しながら、旅にさらなる楽しみを見いだすことを提案している。俳優の本木雅弘を起用したテレビCMに加え、特設サイトとTwitterアカウントをコミュニケーションツールとして情報発信に力を入れている。
特設サイトには、さまざまな領域のエキスパートたちが、独自の視点で「ずらし旅」を薦めるインタビュー記事を掲載している。京都なら、「京都を食べ尽くしたタクシードライバー」による「# 京都では昼におやつ 3時にごはん」や、路地裏研究者による「# 京都は路地裏が面白い」といった内容だ。東京なら、メッセンジャーによる「# 東京の旅は自転車が正解」など、合計100ほどのさまざまな「ずらし旅」のアイデアが並ぶ。
利用客も順調に増えた。グループの旅行代理店であるJR東海ツアーズにおける関連旅行商品の20年11月の販売実績は、20年8月と比較して約8倍に伸びた。これは、同年9月26日から10月25日にかけて、ずらし旅のテレビCMなどの展開に加え、メディア掲載によって認知度が向上した結果だという。Go Toキャンペーンの影響も大きいだろう。
【第2回】 JR東海「ずらし旅」が絶好調 コロナ禍のリブランディング術←今回はココ
【第3回】 花のサブスクで3万人獲得 日比谷花壇の成功要因は実店舗にあり
【第4回】 クラシエ「ma&me Latte(マー&ミー ラッテ)」
【第5回】 カルビー「otomo pack(オトモパック)」
共感者の参加を促すSNSキャンペーン
インタビュー記事に登場するエキスパートの肩書はほかにも、「なにわのカリスマ添乗員」「ダム旅の第一人者、ダムライター」「絶景プロデューサー」と多彩で、見る人の興味を引く。JR東海の営業本部観光開発グループ係長の今泉博敬氏は、「記事で気をつけたのは、単なるスポット紹介にならないこと。旅の正解ではなく、ヒントのようなものを発信できればと考えた」と語る。
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