「手料理」の定義が変わりつつある。博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」や「料理に関する生活者調査」の結果からは、食に対する消費者の意識に大きな変化が起きていることが分かった。一方で、生活定点調査では、「愛を信じる」という回答にも変化が起きている。今回は、食と愛について、調査を踏まえて分析していく。
本連載を通じて、読者の皆さまにもおなじみの博報堂生活総合研究所が実施する長期時系列調査「生活定点」。この最新データが出るたびに、私が必ずチェックする項目がいくつかあります。
例えば、「料理を作ることが好きな方だ」「愛を信じる」。20年以上聴取するこの2つの項目への回答率は、共に減少傾向にあります。愛を信じられるようになる要因はいくつかあると思いますが、手料理もその一つと考えられます。そんな手料理と愛について、今回は「料理に関する生活者調査」の結果なども紹介しながら、お話を展開します。
世の中から料理好きと愛が減っていく?
まずは冒頭で触れた、じわじわと減っている料理好きと愛について、データで確認していきましょう。博報堂生活総合研究所「生活定点」調査の以下のグラフにある水色の線にご注目ください。「料理を作ることが好きな方だ」という人は、質問開始の1998年には37.8%いました。その後は微減傾向となり、2020年は32.0%に低下。22年間で-5.8ptとなりました。同様の傾向は「愛を信じる」でも見られます。こちらは「生活定点」調査が始まった1992年から質問を開始。当時、「愛を信じる」人は86.6%もいました。その後は微増減を繰り返しつつも、2020年は78.4%で過去最低を記録。28年間で-8.2ptとなりました。
「料理は愛」……。誰もが見聞きしたことがあるフレーズだと思います。でも、悲しいことに調査で生活者の意識を追うと、料理も愛も共に落ち込んでいるのです。では、いったい誰が料理好きでなくなっているのでしょうか。
30代を除く、すべての年代で減る「料理好き」
「料理を作ることが好きな方だ」の1998年と2020年の性年代別データを並べて22年間の変化量を出してみると、驚くべき結果となりました。男性30代で+0.4pt(1998年32.0%→2020年32.4%)、女性30代で+4.3pt(1998年36.3%→2020年40.6%)と30代では増加していますが、それ以外のすべての年代で男女ともに減少しているのです。
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