30代女性は、フラットで自由な価値観を持つ人が多い。博報堂生活総合研究所の上席研究員・前沢裕文氏がひもといた調査データからは、こんな今の時代を象徴する特徴が見えてきた。40代おじさんが見習うべきは、30代女性かもしれない。従来のアナウンサーの枠にとらわれずに多様な活動を行う弘中綾香さんに、縛られない生き方や愛される40代おじさんについて聞いた。

 今回お話を伺ったのは、今をときめく愛されアナウンサー・テレビ朝日の弘中綾香さん。様々なジャンルの媒体で数多くの取材を受けていらっしゃいますが、「おじさんについて聞かれたことはないです」と笑いながら教えてくれました。

 注目度も人気度も高まる一方なのは、「奇跡の30歳」(「VOCE」)とされるたたずまいもさることながら、「アナウンサー界の革命児になりつつある」(「ar」)と評されるほどの活躍の幅の広さ、そしてその行動力や発信力の元となっている考え方に理由があるのではないかと思います。

 随所に見られる、私たちがそうしたくてもなかなかできていないポジティブ、フラットな物の見方・考え方。40代おじさんのロールモデルは今や、年上のおじさんではなく年下の女性なのかも。「尊敬する人は織田信長です」とか言っている場合じゃないのかも。

 早速どうぞ。

弘中 綾香
テレビ朝日アナウンサー。1991年生まれ。主な担当番組は「激レアさんを連れてきた。」「あざとくて何が悪いの?」「ノブナカなんなん?」など。公式インスタグラムは instagram.com/hironaka_ayaka/

30代女性は、“軽やか”に考える

前沢 裕文(以下、前沢) 弘中さんはインタビューや雑誌の連載で「多様性」「多様な価値観」についてよく触れていらっしゃいますよね。ご自身が「『こういう考え方もあっていいんじゃないの』っていう言葉を投げかけるスタンス」なんだという発言をされていたのがとても印象に残っています。

弘中 綾香(以下、弘中) そうですね。そういうスタンスですね。

 せっかくアナウンサーという職業に就いているので、自分がどう思っているか、自分がどう考えているかを自分の言葉で伝えたいし、それを誰かが知ったり見つけたりしてくれて、「わたしだけじゃないんだ」であったり「こういう考えを持っている人もいるんだ」であったり、そう思ってもらえたらいいなと思っているんですよね。

前沢 自分はこういうふうに物事を見ているということを周囲や世の中に素直に投げかけたり、こう思っているから一旦やってみようとフットワークよく動いているように見えます。

弘中 あー、確かにそうかもしれない。

 アナウンサーという職業って、結構四角四面なイメージで捉えられがちなのか、「アナウンサーらしからぬ」と言われることが多くて。それはわたしの中では「女子アナ」という職業に象徴的な捉えられ方なのかなと思うことがあります。

 必ずアシスタントみたいな立場じゃなきゃいけないし、聞かれたことに対しても中庸なことを言わなきゃいけない。それが基本とされているというか。だから、わたしが思っていることをちゃんとお伝えしたいなと思って、書くお仕事(「Hanako WEB」「ダ・ヴィンチ」の連載)を始めたというのはあります。

 (アナウンサーには)あまりモノを言う人がいるイメージがない。あります? なくないですか?

自分の言葉で伝えることを大切にしていると語る
自分の言葉で伝えることを大切にしていると語る

前沢 ないですね。むしろよしとされないのかな。

弘中 例えば、場を落ち着かせたいときに女性アナウンサーに振るみたいなことだったり。そういうのはわたし的には面白くないな、やりたくないなと思うんですね。振られてもできないですし(笑)

前沢 そういった「こういう考え方があってもいいのでは?」「こういうことを言ってもいいのでは?」「こういう人がいてもいいのでは?」という自由でフラットな意識や行動って、生活総研のデータでは弘中さんと同世代から少し上の30代女性に多くてですね。

 30代女性に特徴的な意識・行動をいくつか抜き出しているので、ご覧いただきたいんですけど。(文末参考資料)

弘中 へー、面白い!

前沢 結婚、出産を経てライフステージが変わる方が多い世代ということも大きく影響しているかもしれませんが、例えば、「夫婦が別の姓を名乗ってもかまわないと思う」「夫も家事や育児を優先すべきだと思う」などなど、かなり多くの項目で平均よりはるかに多い人が「かまわないと思う」と答えています。

弘中 うーん、その方が自分たちが生きやすいから、そう答えているんじゃないかなと思いますね。そう考えてもらった方がわたしたちは生きやすいから。結婚のこととか、お子さんのこととか、これまでに当てはめて画一的に考えられちゃうと面倒臭いなって思っちゃうし(笑)

前沢 (笑)。一通りご覧いただいて、弘中さんの20代から30代にかけての価値観の変化と重ね合わせて、実感としてはどうですか?

弘中 こういう感じじゃないですかね。20代は、会社に入っていろいろな人と触れ合うようになって、自分の環境や世界が広がって。それはすごくいいことなんですけど、世界が広がった一方で人と自分を比べてしまう。

 同年代の女性でも、結婚や出産というライフステージの変化もそうだし、転職する子がいたり、「1年後に全然違うところにいるね、わたしたち」ということもあるから。比べちゃって「わたしこのままでいいのかな?」と思う年代かなと思います。

前沢 物事を決める軸が定まりきらない時期でしょうしね。

弘中 そうそうそう。何にでもなれるから逆に迷っちゃうし、結婚も出産も選べるかもしれないけど、「果たして今すべきなのかな?」「自分のキャリアを追った方がいいのかな?」とか、いろいろ考える時期だと思いますけどね。選択肢が多いし、周りにいる人も多様な分、迷う。

 30代になるにつれて落ち着いてくるっていうか……、人と比べなくなるってことですね。「わたしはこういう生活が合っているな」って、地に足が着く感じはありますよね。

 あと、「仕事だけじゃないな」っていうのは結構思うようになるかもしれないですね。

前沢 というと?

弘中 仕事ももちろん大事だけど、おばあちゃんになってもずっと仲いい友達関係を築いていくとか、趣味に走るとか、何か新しいことを始めるとか、一本柱じゃなくなる。だから、これだけを追わなくても別にいいなって思えるようになる。あまりしがみつかなくなるというか。

前沢 「あれもありだよな」「これもありだよな」と選択肢を増やせるようになると、幸せの幅が広がりそうですね。

弘中 そうそう。地に足は着いているんだけど、どこかだけに頼っているってことがないかもしれない。軽やか。

前沢 軽やかさでいうと、弘中さんはモデルもやり、雑誌の連載もやり、フォトブックも出されて。軽やかにジャンルを越境して、すでに若い方のロールモデルとなるようなご活躍ぶりです。

弘中 いやいやいや(笑)

前沢 会社の後輩であれば「ここまでやっていいんだ」と思うでしょうし。学生さんや社会人の若手も「弘中さんみたいになりたい」と考えていると思います。アナウンサーになりたいということでなく、弘中さんのような考え方、働き方をしたいという人がどんどん増えると思うんですよね。

弘中 わたしの幹となっているのは会社員ですけど、「会社員だけど、こういうこともやれるんだ」というふうに思ってもらえるのはすごくうれしいです。そういう働き方になってくると思うんですよね、みんながみんな。

前沢 Z世代に増えているスラッシャー(編集部注:複数の仕事や活動を同時に行っている人や考え方のことを指す)のような。

弘中 でも、共働きの方も多い今の30代、40代の女性って、会社員でありお母さんであり妻だから、もともと以前からスラッシャーなんですよね。

前沢 確かに……。会社員/母親/妻のスラッシャー。言われてみれば、そもそも昔からスラッシャーと呼べますね。大きな気づきをありがとうございます(笑)

弘中 よかったです(笑)

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