40代おじさんにだっていいところはある。博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査では、子どもへの思いや子育ての熱意が突出。そこで40代おじさんにエールを送るため、上席研究員の前沢裕文氏(45歳)が、とある少年野球チームの監督さんを訪ねた。その理由は世界の第一線で活躍し、特にドミニカ共和国で野球指導を学んだ知見にある。子どもへの接し方や心得は日本と大違いで、子育て中の40代おじさんにはきっと発見があるはず!

大阪の少年野球チーム・堺ビッグボーイズで中学部監督を務める阪長友仁さん
大阪の少年野球チーム・堺ビッグボーイズで中学部監督を務める阪長友仁さん

 親や先生の教えは、子どもにとって支えにもなれば呪いにもなる。そう思っています。

 例えば、周囲の40代おじさんと話していると、家庭や学校で「人に迷惑をかけてはいけない」と教わって育った方が多い印象を受けます。しかし、ある程度の迷惑をかけることはお互いさまですから、過剰にその教えに縛られてしまうと、人に甘えることができなくなってしまう。

 甘えられないとなると何でも自分でも抱え込む羽目になり、結局、人に迷惑をかけてしまったり。また、自分がそうしてきたからと、他人に対しても「甘えるな」という姿勢で接してしまったり。人に甘えるのが下手。これは40代おじさんあるあるな気がします。

 では、40代おじさんは、自分の子どもに対してはどのように接し、どのようなことを教えていけばよいのでしょうか?

「40代おじさん」はこんなにも子ども思い

 この連載では「イライラしている」「自信がない」など、ネガティブな面にスポットを当てがちですが、40代おじさんにだって素晴らしいところがあります。その一つが、子育てに対する考え方と熱意。博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」の2020年調査結果をご覧ください。

子育て全般 出典:博報堂生活総合研究所 生活定点 ※以降、出典表記のないものは同様
出典:博報堂生活総合研究所 生活定点 ※以降、出典表記のないものは同様

 子どものしつけに責任を持ち、習い事やスポーツもさせてくれて、自分より子どもの教育にお金をかけるうえに財産も残してくれる。最高のパパ!!

 ところが、両親のどちらを尊敬しているか尋ねると、父親は母親に大きく水をあけられています。聴取開始の1998年は父親尊敬派53.7%:母親尊敬派46.4%と7.3ポイント上回っていました。しかし、2002年を境に母親尊敬派が逆転。20年は父親尊敬派が14.4ポイントも下回りました……。世のお父さんは寂しくも受け止めなければならない結果と言えるでしょう。

尊敬
注)全年代の父母が対象

 熱心であるにもかかわらず、母親のように尊敬されていない。この状況を改善することはできないものでしょうか。

 そこで、今回は子育ての極意を学ぶべく識者を訪ねました。お話しいただいたのは、MLBピッツバーグ・パイレーツの筒香嘉智選手や埼玉西武ライオンズの森友哉選手が在籍したことでも知られる、大阪の少年野球チーム・堺ビッグボーイズで中学部監督を務める阪長友仁さんです。

 なぜ少年野球の監督に?と不思議に思われるかもしれません。阪長さんを頼った理由は、その珍しい経歴にあります。

阪長 友仁
1981年生まれ。24歳から海外での野球普及活動を開始。2007年にガーナ代表監督として北京オリンピック出場を目指した後、コロンビア、グアテマラ、ドミニカ共和国などの中南米諸国でさらに野球指導を学ぶ。現在は堺ビッグボーイズで指導することに加えて、プロスペクト(大阪府堺市)に所属し、ラテンアメリカの指導方法を全国に伝える活動中。15年には筒香嘉智選手のドミニカ共和国でのウインターリーグ参加もサポートするなど、ドミニカ野球研究者として様々な活動を行っている

 阪長さんは、07年にニューズウィーク日本版の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれるなど、世界中を活動のフィールドにされてきました。野球のガーナ代表監督を務めたほか、アジア各国でナショナルチームのコーチを、そして中南米ではJICA(国際協力機構)の青年海外協力隊として活動しながら中高生の指導に尽力されました。特に、カリブ海の野球強豪国であるドミニカ共和国の選手育成・指導法に明るく、ドミニカ共和国で学んだことを積極的に情報発信し続けています。

 世界各国で、指導する大人たちを見て、それに一喜一憂する青少年、少年少女たちを見てきた。阪長さんが野球指導を通じて得た知見は、子育てにも“効く”ことばかりだと感じるのです。ですから、話の舞台は野球となっていますが、ぜひみなさんの子育てに置き換えてお読みいただければ幸いです。

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