「40代おじさん」は、ラブレターよりキスを信じる? 妻を信用しているけど、母親びいき? 博報堂生活総合研究所・上席研究員の前沢裕文氏(44歳)による今回の記事は、2020年に二択で提示した調査の結果を一挙公開。40代おじさんの回答を中心に、たかが二択と侮れない、男女差・世代差が表れた特徴を分析する。互いの違いを知り合う一助になること間違いなし!
たかが二択、されど二択
もう15年ほど前のことになりますが、友人女性が某有名人男性と付き合っていた時期がありまして……。根掘り葉掘り聞いた中で、私が一番好きなのが二人の初対面の話です。
その方が出演されている公演に友人のお父様が招待され、観劇後に家族で楽屋あいさつに訪れたときのこと。彼が彼女に向かって開口一番「和花と洋花、どっちが好き?」と問いかけてきたそうです。名乗る前からいきなり二択! しかも和花、洋花ときた。友人は「こんな人、今まで出会ったことない! 素敵!」と瞬間恋に落ち。初デートやその後の逢瀬(おうせ)の話も、真面目に耳を傾ける私の凡庸ぶりをあざ笑うかのように、エピソード一つ一つがいちいちすがすがしく常軌を逸していて、今でも忘れようがなくずっと覚えています。
和花と洋花ほどトリッキーではありませんが、博報堂生活総研の調査にも二択の設問が多くあります。例えば、運・ツキ派 vs 努力派。「世の中、努力よりも運・ツキだと思う」「世の中、運・ツキよりも努力だと思う」どちらの考えに近いかを尋ねたもので、生活者の回答は、
となっています。
二択というのは、その2つの選択肢を選んでいる時点で質問者のバイアスがかかっていますし、物事を単純化してしまうという懸念の声もよく聞かれます。運・ツキ派 vs 努力派にしても努力の中身やレベルは問うていないわけで、聞かれた側も「えいや!」で答えざるを得ないケースもあるでしょう。また、社会的な問題への対応の是非を賛成派?反対派?と問うことで、人々の間に分断が生じることだって起こり得ます。保守派 vs リベラル派で国が二分された、2020年のアメリカ大統領選挙も記憶に新しいところです。
しかし、私が小学生の頃には「究極の選択」なる質問(遊び・ゲーム)が一世を風靡し、「マイク・タイソンに一発だけ殴られる vs 小学生に一日中殴られる」や、ここには書けない下品な二択を集めた本が出版されて話題を呼びました。また、現在でも「あなたはどっち派?」という広告プロモーションが鉄板であるように、単純であるが故に話が盛り上がることが多いのも確かです。
前置きが長くなりましたが、今回は、20年に生活総研が実施した「信頼に関する⽣活者調査」から、二択で提示した調査の結果を紹介させてください。いつも通り40代おじさんの回答を中心に、男女差、世代差が顕著に表れたデータも取り上げたいと思います。たかが二択と侮れない、意外と興味深いものもありますので、ご自身はどっち派かお考えいただきながら、たわいない分断をお楽しみいただければ幸いです。
あなたはどちらを信じますか?
早速⾒ていきましょう。質問は「次のうち、あなたはどちらが信用できますか?」で、全部で109個の二択を提示したものです。どちらを信じるのか、各性年代で価値観の違いが表れました。
まずは、キス vs ラブレター。男性間の差は僅かではありましたが、20代男性(60.5%)を上回り、40代おじさんが全体1位に。40代おじさんは信じてほしいとき、思いの丈をキスに込めるようです。総じて男性はキス派が多く、20~60代すべての世代で6割前後の割合となっています。
一方、女性は逆の結果となりました。ラブレター派が70.5%に上っています。表にはありませんが、最も少ない20代女性でも65.2%、60代女性では77.3%がラブレター派とキス派を圧倒。キス一つで信用を得ようとする男性は、むしろ信用を失いかねません。40代おじさんの回答結果を後輩女性に伝えたところ「気持ち悪ィィィィ…」と蔑まれましたから。カラオケでTHE BLUE HEARTSを歌うなら「キスしてほしい」より「ラブレター」です。要注意です。
同じく恋愛関連で男女差が大きかった二択が、昼間に言われた「好き」 vs 夜に言われた「好き」でした。
男女ともに昼間派が多数派ではあるものの、数値には大きな開きがあります。男性平均の62.3%に対して、女性平均は84.1%とその差は21.8ポイントも。また、40代女性は昼間派が88.1%を占めました。パートナーの方は、ぜひ明るいうちにたくさん愛をささやいてください。
なお、夜派が最も多かったのは20代男性でした。42.6%が「夜に言われた『好き』の方が信用できる」と回答したのは若さでしょうか。女心を分かっていない人が結構多いようです。
続いて、よくいわれる男女の違いも、しっかり数値として表れています。
多くの読者の予想通りかと思います。男性の方が、数字派が多い結果となりました。そして、その割合は62.8%と女性を大きく上回っています。中でも、30代男性は数字派が72.2%と唯一7割を超える結果に。全性年代中、数字派の数値が2番目に高い60代男性は63.0%なので、30代男性の高さが際立ちます。理屈と感情がぶつかることは、仕事においても私生活においてもしばしばあることですから、30代男性は自身の理屈っぽさを自覚しておくと、周りと穏やかに話せるかもしれません。
さらに他の二択でも、男性が女性と比べて理屈や説明がつく物事を信じる傾向は表れています。
心情 vs 数字ほど大きな差はありませんが、男性=過去派、女性=未来派となりました。40代おじさんの57.9%は、60代男性(59.3%)に次いで全性年代中2番目に高い数値です。前回の記事(40代おじさんの意識を精神科医が分析 悲しい性をメッタ斬り!?)でも、先生から「『あの頃はよかったなあ』と過去にすがる感覚が強い」というご指摘がありましたが、それを裏付ける結果と言えそうです。
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