女性蔑視発言は「40代おじさん」にとってひとごとではない――。博報堂生活総合研究所 生活定点のデータから、40代おじさんに潜む“心の闇”が垣間見える。言行不一致な同志たちにこそ、あえて耳の痛いデータを見てほしい。上席研究員の前沢裕文氏(44歳)による「40代おじさんシリーズ」第3弾。
40代おじさんの男女平等感はズレている
失言といわれるものには、感情に基づく失言と、思想に基づく失言があるように思います。売り言葉に買い言葉のような一時の怒りや焦りから出た失言は、直後に自分でもハッと気づくでしょう。一方、年月を重ねて築かれた価値観から出た失言は、日々少しずつズレてきたが故に自分ではパッとは気づきづらい。その上、周りも「ああ、この人は普段からそういう考えで生きているんだな……」と諦めムードになり注意してもらえないので、ズレた一本道を延々歩き続けることになりかねません。
2021年1月に、男女間の差別・蔑視・偏見を巡って性年代や国を超えて議論が広がり、連日報道もされましたが、私たち40代おじさんにとってひとごとのニュースではないのです。なぜなら、40代おじさんも男女平等に関する意識が世の中とズレているから。
博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」の2020年調査から、男女平等感について尋ねた項目をいくつか見てみましょう。まずは、「あなたは社会全体では、男女は平等になっていると思いますか?」という質問です。
半数以上が「どちらかといえば男性が優遇されている」と回答しているものの、「どちらかといえば女性が優遇されている」と回答した人の割合は13.3%で、30代男性(16.4%)に次いで全体で2番目に高い数値。女性平均との差は8.8%となっています。「ほぼ平等だ」との回答は男性平均を下回りましたが、こちらも女性平均からは11.4ポイント高くなっており、認識に差があることが見てとれます。
続いて、「あなたの家庭生活では、男女は平等になっていると思いますか?」という質問への回答です。
傾向としては同じく「どちらかといえば女性が優遇されている」と感じている人が、男性平均より1.5ポイント、社会全体についてほどの差はないものの、女性平均より4.3ポイント多い結果となっています(家庭ごとに家族の関係性は違いますから、「うちでは本当にこうなんだよ!」ということもあるでしょうが)。
他にも「教育全般では、男女は平等になっていると思いますか?」「法律や制度では、男女は平等になっていると思いますか?」という質問でも同様の傾向が見られました。40代おじさんは「女性が優遇されている」と思っている人がわずかではあるものの男性平均より多いですし、「社会全体で男性が優遇されている」と感じている女性とは大きな認識のズレがあるということです。これまで過ごしてきた環境や今置かれている環境からそう感じているのでしょうが、他の層の認識とは少し温度差を感じます。
40代おじさんは“口だけ”のくせに、謎の自信を持っている
40代おじさんにとって耳の痛い、44歳の私にとっても自分で自分を刺すようなデータはまだあります。書けば書くほど戻ってきたブーメランが刺さるので、気が重いのですが……。女性とのズレに加えて、男性の中でもちょっとズレている実態を見ていきましょう。
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男女とも、キャリアと家事のバランスをとるべきだと思う
31.7%(男性1位) 男性平均:28.2% 全体:34.5%
「男女とも、キャリアと家事のバランスをとるべきだと思う」と回答している人の割合が31.7%で男性中では1位となっており、数値は低いものの1位であることは素晴らしい結果と言っていいと思います。
しかし、男女ともキャリアと家事のバランスをとるには、言わずもがな恋人・夫婦間の協力が不可欠です。果たして協力し合えているのでしょうか? 現状では、40代おじさんが奥さんに協力しようという意志は、男性平均に比べて弱く出ています。
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家庭での役割を、夫婦で平等に分担するのが理想(既婚者ベース)
21.4%(男性最下位) 男性平均:26.0% 全体:28.2% -
家庭での役割を、夫婦で平等に分担している(既婚者ベース)
10.0% 男性平均:13.0% 全体:10.1%
理想として家庭での役割を夫婦で平等に分担したいと考えている人の割合は、全体平均を6.8ポイント下回り男性中最下位の21.4%にとどまっており、さらに、実際に夫婦で平等に分担しているのはわずか10.0%となっています。この体たらくで、「男女とも、キャリアのバランスをとるべきだ」などと、どの口が言うのでしょうか?
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