イーロン・マスク氏の米ツイッター買収が2022年10月27日に成立し、従業員の解雇やサービス改変のツイート連投で世間を騒がせている。マスク氏はどこに向かおうとしているのか。「Web3(3.0)」など最新技術に詳しい経営者・起業家の國光宏尚氏とIT批評家の尾原和啓氏が激論した。

Web3やメタバースなど最新テクノロジー動向に詳しの経営者・起業家の國光宏尚氏とIT批評家の尾原和啓氏が、イーロン・マスク氏が買収した米ツイッターについて対談した
Web3やメタバースなど最新テクノロジー動向に詳しい経営者・起業家の國光宏尚氏とIT批評家の尾原和啓氏が、イーロン・マスク氏が買収した米ツイッターについて対談した

 電気自動車(EV)の米テスラや宇宙開発の米スペースXを率いるイーロン・マスク氏が、米ツイッター(以下、Twitter)の買収を完了してから間もなく1カ月。従業員の50%を解雇し、有料サービス「ブルー」を月額8ドルに値上げして、認証バッジの発行方法を刷新するなど、Twitterの事業に大なたを振るいながら、自らツイートを連発してその内容を世界に発信し続けている。

 “ハードコア(激烈)”に働くか、退職するかとメールで社員に迫り、さらに1000人以上が会社を離れたという報道もある。Twitterの運営は大丈夫なのか、と心配する声もネット上で多くあがっている。かつてTwitterが永久追放したトランプ前米大統領のアカウントを復活させたことも話題となっている。

 マスク氏は何を目指し、Twitterはどこに向かうのか。gumiの創業者でVR(仮想現実)やブロックチェーン関連ビジネスを手掛ける國光宏尚氏と、IT批評家の尾原和啓氏が、マスク氏のTwitter買収の狙いと戦略についてざっくばらんに議論した。2022年11月10日に音声SNS(共有サービス)「Twitterスペース」上で実施した公開討論の模様をお届けする。

國光宏尚氏。2007年にgumiを創業。SNSなどのモバイルインターネット事業と共にVR(仮想現実)やブロックチェーン関連ビジネスも手掛ける。21年7月にgumi会長を退任し、VRやブロックチェーンゲーム開発のThirdverse(サードバース、東京・千代田)のCEO(最高経営責任者)に就任。Web3事業を手掛けるフィナンシェ(東京・渋谷)の代表も務める。著書に『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)
國光宏尚氏。2007年にgumiを創業。SNSなどのモバイルインターネット事業と共にVR(仮想現実)やブロックチェーン関連ビジネスも手掛ける。21年7月にgumi会長を退任し、VRやブロックチェーンゲーム開発のThirdverse(サードバース、東京・千代田)のCEO(最高経営責任者)に就任。Web3事業を手掛けるフィナンシェ(東京・渋谷)の代表も務める。著書に『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)

買収の目的は「暇つぶし」!?

尾原和啓氏(以下、尾原) 「イーロン・マスクがTwitterを買収した背景にある戦略は何なのか」「Twitterをどう変えるのか」。国内でも大きな話題になっています。今日は國光さんと、そういったところをお話ししていきます。

 日本のニュースだけを見ると、表面的なレイオフの話だったり、「月8ドルで認識バッジを付けます」だったり、さまつなところでワイワイしていますが……。

 「イーロン・マスクは、Twitterの買収を一度断ったのに、なぜこのタイミングで踏み切ったのか」「彼は何を目指して、Twitterの買収をしたのか」という根源の話から入りたいですよね。國光さん的には、どう思っていますか?

國光宏尚氏(以下、國光) 誤解を恐れずに言うと「暇つぶし」という意味が一番大きいと考えています。

 起業家ってすぐに行動に移したいと考える人が多いんですよね。好奇心が強いから何かやっておきたくなる。テスラの製造に課題があって倒産の危機に陥っていた時期を乗り切り、株価も22年春ころは絶好調になっていた。スペースXもいい感じになってきて、暇になったんです。

尾原 テスラもスペースXも軌道に乗り「何かをしたいという欲求を発揮できる場所がなくなってきた」と。

國光 そうですね。「けっこう暇だなぁ、俺。やることなくなってきたなぁ」と思った時に、多くの人はTwitterとかSNSにたくさん投稿するじゃないですか。それとほぼ同じです。「だったら、Twitterを買っちゃえ」と。

 そういうところから始まって、22年4月に一度は「買う」と言ったんだけど、米国の金利の引き上げで株価が暴落したり、米中対立だったり、スペースXがウクライナに人工衛星を使ったネット接続サービス「スターリンク」を提供している件だったりで、忙しくなったんです。

尾原 はい、はい。

國光 ところが、米国の利上げで株価のボトムがいったん見えなくなりました。もともと買う予定だった金額から、実際の株価がかなり値下がりしていて。やっぱり買うのはどうかと思って、ゴネまくったみたいなところですね。

 今回のタイミングは「米国の金利の引き上げが、そろそろ落ち着くよね」「テスラとスペースXが、ある程度見えてきたよね」となって、また余裕が出てきたというのが1つの理由ではないでしょうか。

 もう1つ、超一流起業家は損切りが苦手な人が多いと思うんですよね。

尾原 意外とそうですね。買う時のリスク管理をめちゃくちゃするわりには、売るタイミングでは……。例えば「孫正義さん、もっと早めにアリババ(中国アリババ集団)を売ってもよかったのに」とか、いろいろなものがありますよね。

國光 おっしゃる通りです。起業家って、攻めは得意だけど、守りがあまり得意じゃない人が多い。今回のマスク氏にしても、1000億円くらい違約金を払ったら契約を無効にできたんじゃないかと思います。

イーロン・マスクが掲げるビジョンの本質とは?

尾原 マスク氏が買収したあと、TwitterのmDAU(収益化可能な1日当たりの平均利用者数)が2割くらい増えているらしいんですよ。彼が騒げば騒ぐほど、結果的にTwitterのユーザーが増えています。

國光 おー、すごいですね。

尾原 日本にいると、Twitterって「ソーシャルネットワークの2番手」くらいの感覚ですよね。だけどグローバルで見ると、米メタが年間約17兆円の売り上げに対してTwitterはまだ7000億円くらいしかありません。mDAUで約2.4億人です。Facebookでいうと、サービス単体でDAU(1日当たりの平均利用者数)は約20億人です。mDAUとDAUという違いがありますが、1桁の差があるわけです。

國光 そうですよね。

尾原 そういう意味では、マスク氏が騒いで2割のユーザーが戻ってくれば、彼にとってもプラスになる。ショーマンシップ的な言動が、結果としてTwitterのユーザーを増やすから、短期的には、連続してスキャンダラスなことをしてしまうと思うんですね。とはいえマスク氏のすごいところは、物事の本質の軸を見て、その真理を探究し続けるところです。

IT批評家の尾原和啓氏。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業の立ち上げを支援する。リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、オプト、グーグル、楽天(現楽天グループ)などで事業企画、投資、新規事業に携わる。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)、『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文氏との共著、日経BP)など多数の著書を持つ(写真/菊池くらげ)
IT批評家の尾原和啓氏。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業の立ち上げを支援する。リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、オプト、グーグル、楽天(現楽天グループ)などで事業企画、投資、新規事業に携わる。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)、『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文氏との共著、日経BP)など多数の著書を持つ(写真/菊池くらげ)

 例えばテスラでいえば、僕たちは中長期的に見て、「再生可能エネルギーで過ごす世界」を目指さなければなりません。そうすると、風力発電と太陽光発電に依存することになります。

 風力発電と太陽光発電は天候などに左右されるので、電力をためておくためのバッテリーコストを抑えることが大事です。バッテリーコストを抑えるためには、EVを大量生産する必要がありますが、いきなり安くはできません。だから最初は、「みんなが買ってくれる、高品質なバッテリーを搭載した電気自動車をつくろう」ということで、彼はテスラでEVのスーパーカーをつくる。

 普通に考えたら、「え、そんなにでかい規模で、そんなにシンプルな戦略をやりきろうとするの?」ってなりますよね。

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