TikTokでヒットコンテンツを生み出すには、どのような戦略が有効なのか。『TikTokハック あなたの動画がバズり続ける50の法則』の著者であり、TikTokのフォロワー数が600万人超えのクリエーター集団「マツダ家の日常」の関ミナティ氏にIT評論家の尾原和啓氏が聞いた。

クリエーター集団「マツダ家の日常」を率いる関ミナティ氏。秘密結社という設定で、経歴はベールに包まれている。動画にはメインの登場人物として登場しつつ、緻密なコンテンツ戦略でチームをけん引。21年10月にTikTok再生回数で世界5位などの実績を積み上げてきた
クリエーター集団「マツダ家の日常」を率いる関ミナティ氏。秘密結社という設定で、経歴はベールに包まれている。動画にはメインの登場人物として登場しつつ、緻密なコンテンツ戦略でチームをけん引。2021年10月にTikTok再生回数で世界5位などの実績を積み上げてきた
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 TikTokの勢いが止まらない。米調査会社イーマーケターの調査によると、米国での平均利用時間はInstagramやFacebookはもちろん、2022年4月にはTikTok利用時間がYouTubeを上回っている。

 そんなTikTok旋風が吹く中で、注目を集めている動画クリエーター集団がいる。「いやヤバいでしょ」のフレーズがバズり、「TikTok流行語大賞2021」で「チャレンジ部門」を受賞した「マツダ家の日常」だ。若者たちからの支持を集め、21年10月にはTikTokの再生回数で世界5位を記録。TikTokでは500万回再生を超える動画を連発する一方、YouTubeでも22年1~3月期のチャンネル総再生が約9億5000万となり、日本ランキングで1位を獲得するなど躍進を遂げている。

 驚くべきは、彼らがTikTokを始めたのは20年11月からで、このすさまじい活躍ぶりはわずか2年ほどの出来事だということだ。短期間で流行語を作り、TikTokでトップクリエーターのポジションを築いたマツダ家の日常とは一体何者なのか。メンバーの中心人物であり、チームのTikTok戦略を担う関ミナティ氏に、この2年間の軌跡と「バズる動画の法則」を聞いた。

尾原和啓氏(以下、尾原) 初投稿が20年11月なので、この躍進がたった2年の間のことなんですよね。「マツダ家の日常」は秘密結社ということなんですが、お話しできる範囲でまずは初投稿に至った経緯を教えていただけますか。

関ミナティ氏(以下、関) マツダ家の日常は現在チームで活動していますが、最初は3人で始まったんです。その3人でよくキャンプをしていて、あるとき僕が前日に見ていたMr.都市伝説こと関暁夫さんのものまねを酔っ払った勢いで披露したら、一緒にいた友達2人がめちゃくちゃ爆笑して。そのうちの1人が「これをTikTokに投稿したい」って言い出したんですね。

 「こんなの見たい人いるのかな」と思いつつ、でもせっかくやるのだったらバズりたいなっていう気持ちもあって。そうして投稿したのが、ファミリーマートの商品を都市伝説風に紹介する「ロスチャイルドファミリーマート」(都市伝説で有名な『ロスチャイルドファミリー』とコンビニの『ファミリーマート』を掛けたもの)でした。

 ありがたいことにたくさんの人に見ていただいて。だけど「まあ偶然だろう」と思っていました。ところが、2本目を投稿したらまた多くの人に見てもらえたんです。これは何か起こるかもしれないな……ということで、3人で話した結果、当時やっていたことを全部やめて、TikTokに全振りしようと決めました。

尾原 初投稿が当たっただけでも十分すごいのですが、かなり初期の段階から「TikTokに全振りしよう」と決断したこともすごいと思います。何をもって「全振りできる」もしくは「全振りしよう」と決めたのですか? そのときはまだフォロワーがいないわけですよね。

IT批評家の尾原和啓氏。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業の立ち上げを支援する。リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、オプト、グーグル、楽天(現楽天グループ)などで事業企画、投資、新規事業に携わる。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)、『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文氏との共著、日経BP)など多数の著書を持つ。滞在先のシンガポールからオンライン会議で対談
IT批評家の尾原和啓氏。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業の立ち上げを支援する。リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、オプト、グーグル、楽天(現楽天グループ)などで事業企画、投資、新規事業に携わる。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)、『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文氏との共著、日経BP)など多数の著書を持つ。滞在先のシンガポールからオンライン会議で対談
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 はい、0人です。まだTikTokについて何も勉強していなくて、手探りで作った動画が100万回再生を超えたんですね。「これは、とんでもないことが起こっているな」と感覚的に分かりました。この現象は一体何なんだろう? と、ひもといていったところ、当時はYouTubeと違って広告収益化ができなかったので、本気でTikTokをやっている人が全然いなかったんですよ。

尾原 プラットフォームとしてはすごく利用されているのに、売り上げが見えていないから競争相手が少なかった、と。

 そうなんです。なので、YouTubeに比べたらめちゃくちゃ勝ちやすいだろうなっていう勝算があって。それで「TikTok=マツダ家の日常」だという認知を取りにいこう、と決めて動き出しました。