米グーグルや米アップル、ヘルスケア系スタートアップなどを経て、パナソニック ホールディングス執行役員となった松岡陽子氏。米シアトルで開始したパーソナル支援サービス「Yohana Membership(以下、Yohana)」の狙いは何か。パナソニック社員との連携といった取り組みや今後のビジョンを、IT評論家の尾原和啓氏が聞く。

▼前回はこちら グーグル出身、AI専門家でパナ役員 松岡氏が描く新・暮らし支援
「Yohana」のWebページ。子供や家事のこと、調べ物など生活のさまざまな問題についてエージェントが相談に乗り、解決法を提示してくれる
「Yohana」のWebページ。子供や家事のこと、調べ物など生活のさまざまな問題についてエージェントが相談に乗り、解決法を提示してくれる

コロナ禍の苦しさ「仕事を辞めるべきか?」

尾原 2021年9月に立ち上げたYohanaは、働く親が家族や家庭の幸せを実現するためのサービスです。立ち上げにあたって松岡さん自身にはどんな思いがありましたか。

松岡 これまでは「子供の健康を見ることを手伝ってくれるサービスをつくりたい」「親が遠くに住んでいて、自分で寄り添うことが難しいので介護関連のサービスができないか」と思っていました。そんなときに新型コロナウイルス感染症拡大の時期に入って、自分自身が仕事と家庭の両立で苦しい状況になって、他人のことを考えられなくなってしまいました。

 子供が4人いるのですが、4人とも家からZoomでオンライン授業を受けて、その横で私もオンラインで1日中ミーティングしている。その中で絶えず子供たちは「これがうまくいかない」「宿題が分からない」と、いろいろなことで大騒ぎします。自分の世界と子供や家族と過ごす世界との境目がなくなり、やることが山のようにあるのに、どんどん積み重なってしまいました。何もできなくなって「仕事を辞めるべきではないか?」と思ったほどです。

 米国ではその頃、多くの女性が猛烈な勢いで仕事を辞めていきました。1929年の大恐慌時代になぞらえて「大退職時代」と呼ばれました。「やっぱり皆さん、私と同じような苦労をしながら生活しているんだ」と分かりました。それならば毎日の暮らしをまず良くするサポートをしたいと思ったのです。

松岡陽子氏。パナソニック ホールディングス執行役員、くらしソリューション事業本部長で、働きながら家族を支える人々を対象とした個人向け会員サービスを展開する米ヨハナのCEO(最高経営責任者)。グーグルやアップル、スタートアップの米カンタスなどでヘルスケア関連の事業を手掛けた後、19年10月にパナソニックへ入社
松岡陽子氏。パナソニック ホールディングス執行役員、くらしソリューション事業本部長で、働きながら家族を支える人々を対象とした個人向け会員サービスを展開する米ヨハナのCEO(最高経営責任者)。グーグルやアップル、スタートアップの米カンタスなどでヘルスケア関連の事業を手掛けた後、19年10月にパナソニックへ入社

尾原 自分の家のこと、家庭のことを仕事と両立しようとすると、仕事を諦めざるを得ない人が増えてしまうことが大きな課題になっていた、と。

松岡 今はこの課題に取り組みたいと考えています。研究者だったときは障害者向けのロボット義手などを作っていました。けれど、使ってくれる人の数が少ないものは、ビジネスを育てる上で課題もあります。だけど、実は一般的に使われているものを少し変えるというアプローチで障害を持っている方におすすめすると「欲しい」と言ってもらえる。そうした学びもあり、今回は多くの人が求めるターゲットオーディエンス(利用者)の多いサービスを目指しました。

尾原 実際にYohanaのイメージビデオを拝見しました。チャットで相談を受けて、ハウスクリーニングをどう手配するか、おいっ子の誕生日プレゼントをどうするか相談するといった形で「日常生活の中でやりたかったけど、実際には結構大変でなかなかやれなかった」という部分にフォーカスしています。とてもユーザー目線を重視したサービスになっています。

松岡 実際に始めると、思った以上に喜んでくださる方がいました。「これがなきゃもう今後生きていけない」「あんまりうれしかったから誕生日の写真を送ります」といった人もいて、さまざまなフィードバックをもらいます。

尾原 「こういうふうに使われるんじゃないかな?」っていう想定もあったと思います。サービスを出してみて、実際にそれが当たったのでしょうか。それとも全く違う使い方が出てきたのでしょうか。

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