米マサチューセッツ工科大学(MIT)出身で、米グーグル、米アップルを経てパナソニックに――。松下幸之助氏の理念に共感したという松岡陽子氏は、パナソニックホールディングスの執行役員として、家族を持ちながら働く人々を支援する個人向けサービスを立ち上げた。松岡氏の次のビジョンは何か。IT評論家の尾原和啓氏が迫った。

松岡陽子氏。パナソニック ホールディングス執行役員、くらしソリューション事業本部長で、働きながら家族を支える人々を対象とした個人向け会員サービスを展開する米ヨハナのCEO(最高経営責任者)。米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)で科学学士号を取得。米マサチューセッツ工科大学(MIT)でAI(人工知能)とコンピューターサイエンスの分野で修士号、電気工学とコンピューターサイエンスで博士号。2009年にグーグルの研究組織「Google X」の創立メンバーとなる。15年にヘルスデータを扱うスタートアップの米カンタス、16年にはアップルでヘルスケア製品開発に携わる。17年にグーグルへ戻り、ヘルスケア部門「Nest」のCTO(最高技術責任者)として活躍。19年10月にパナソニックへ入社
松岡陽子氏。パナソニック ホールディングス執行役員、くらしソリューション事業本部長で、働きながら家族を支える人々を対象とした個人向け会員サービスを展開する米ヨハナのCEO(最高経営責任者)。米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)で科学学士号を取得。米マサチューセッツ工科大学(MIT)でAI(人工知能)とコンピューターサイエンスの分野で修士号、電気工学とコンピューターサイエンスで博士号。2009年にグーグルの研究組織「Google X」の創立メンバーとなる。15年にヘルスデータを扱うスタートアップの米カンタス、16年にはアップルでヘルスケア製品開発に携わる。17年にグーグルへ戻り、ヘルスケア部門「Nest」のCTO(最高技術責任者)として活躍。19年10月にパナソニックへ入社

 生物学、医学、ロボット工学、機械学習を融合させた人体や脳のリハビリ機器の研究によって米国では“天才賞”と称される「マッカーサー賞」を受賞したという経歴も持つ松岡陽子氏。米グーグルや米アップルではハードウエアとソフトウエア、人間とAI(人工知能)をつなげることで人々の暮らしをサポートするための開発に取り組んできた。

 19年にパナソニックへ入社した松岡氏は、21年9月に個人向け会員サービス「Yohana Membership(以下、Yohana)」を展開する同社子会社を米国で立ち上げる。AIと実在の人間によるサポートを掛け合わせ、家のメンテナンスから、子供や自分自身の予定の調整、病院の予約、贈り物やバースデーケーキの手配といった様々な用事(タスク)について解決方法を提案し、手配し、完了させるところまで導くためのサービスだ。

 創業以来受け継がれるパナソニックの経営理念に共鳴したという松岡氏は、コロナ禍で自らもワーキングマザーとして「仕事と家庭の両立」に苦しんだという。その経験から、Yohanaを開発し、働く親の日常を手助けするためにサービスの改善を繰り返している。事業から見えてきたものは何か。次に何を目指すのか。IT評論家の尾原和啓氏が問いかけた。

松下幸之助氏の理念に共感

尾原和啓氏(以下、尾原) Yohanaのようなインクルーシブ(社会を包み込み、助け合う)なサービスは個人的にも大好きなので、お話ができてうれしいです。松岡さんの経歴の中では、Google Xを立ち上げ、Nestに取り組み、ヘルスケアデータを扱う米カンタスやアップルのヘルスケア部門と、多くのテック企業を経験されました。まずはパナソニックに転籍された経緯を教えてください。

松岡陽子氏(以下、松岡) テック企業で働きながらも、今後どうしようかと考えるときがありました。自分のスタートアップを立ち上げるなら、ベンチャーキャピタルから資金調達もできるし、グーグルや米アマゾン・ドット・コムのような大きな会社の中でやってもいい。そんなときに、ちょうどパナソニックから声がかかったのです。

 「日本の会社が米国で何をしようとしているのかな?」と思いましたが、パナソニックの幹部の方々と会い、リサーチをすると、私がやりたいこととパナソニックのミッションがぴったり合うことが分かりました。創業者・松下幸之助さんのミュージアム(歴史館)に行き、どんな考え方で会社を立ち上げて、どんなものをつくり、なぜPHP研究(Peace and Happiness through Prosperityの略で松下幸之助氏の理念を伝える出版などの活動)を始めたのかといったことを知りました。そして「これだ」と確信しました。

 パナソニックという素晴らしい日本の会社を、これからもう一回さらに持ち上げなければいけないと聞き、手伝っていきたい気持ちでした。

IT評論家の尾原和啓氏。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げを支援する。リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、オプト、グーグル、楽天(現楽天グループ)などで事業企画、投資、新規事業に携わる。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)、『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文氏との共著、日経BP)など多数の著書を持つ。オンライン会議で松岡氏と対談した
IT評論家の尾原和啓氏。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げを支援する。リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、オプト、グーグル、楽天(現楽天グループ)などで事業企画、投資、新規事業に携わる。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)、『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文氏との共著、日経BP)など多数の著書を持つ。オンライン会議で松岡氏と対談した

尾原 松岡さんはずっと、AIに関係した研究開発に携わってきました。そうしたノウハウや経験を生かす場として、パナソニックの理念に共感されたということでしょうか。

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