新型コロナウイルスのワクチン開発をはじめ、多彩な課題解決にAI(人工知能)が使われている。震災など日本独自の課題に備えるうえでも、AIの力が必要とソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の北野宏明社長は指摘する。AI活用の近未来像をIT評論家の尾原和啓氏が問いかけた。

AI活用の将来像について、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の北野宏明社長とIT評論家の尾原和啓氏が対談した
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の北野宏明社長が、AI活用の将来像を語った

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尾原和啓氏(以下、尾原) アフターコロナを見据えたときに、日本の企業はAIを活用してどんな領域に取り組むべきだと考えますか。

北野宏明氏(以下、北野) これから20年ほどの間に確実に起こるだろうと予測されているのが、首都圏の直下型地震と南海トラフ地震、そして火山の噴火です。これらの災害による経済損失は数百兆円にもおよぶといわれています。国の年間予算がおよそ100兆円ですから、いかに甚大な被害なのか想像できますね。

 国内における中長期的な課題は、これらの災害に遭った後の日本をどのように復興させていくか。グローバルアジェンダを意識したビジネスに取り組みながら、同時に厳しい災害を想定して様々な戦略を立てなければいけません。

尾原 防災だけでなく、大規模災害が実際に起こった「後」の復興を視野に入れて、今からいかにレジリエンス(企業など組織の回復力)を上げていくかということですね。

 米調査会社のガートナーが2021年に取り上げたテクノロジーのトレンドの一つに「インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス」がありました。コンポーザブル(Composable)とは、構成や組み立てが可能であること。つまり、全てを部品化して、柔軟に再編成できるビジネスです。コロナ禍においては会議室をコワーキングスペースとして活用したり、遠隔地と連携したりといった活動が見られましたが、さらに規模を拡大して考えなければならないわけですね。

IT評論家の尾原和啓氏。対談はWeb会議を通して実施した
IT評論家の尾原和啓氏。対談はWeb会議を通して実施した

北野 問題は準備期間です。私たちに残された時間は、後10年程度しかない。かなりのピッチで取り掛からないといけません。たとえ準備ができたとしても被害がゼロになることはありませんから。

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