第3次AI(人工知能)ブームが到来してから約10年。AIはマーケティングを含むあらゆる分野のビジネスで活用されるようになった。AIがもたらす次の革新は何か。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL、東京・品川)の北野宏明社長に、IT評論家の尾原和啓氏が聞いた。

脳の神経細胞に模した構造でデータを処理するディープラーニングが発展したことがきっかけとなり、第3次AIブームが到来した。これらのAIは判別や分類、あるいは膨大なデータの中から特徴を見つけ出すことを得意としており、様々な分野で応用された。新型コロナウイルスの構造分析やワクチン開発にもAIが大きく貢献しているという。
AI技術による成果が驚きを持って伝えられる一方で、多くの仕事が自動化されることで人々の仕事がAIに奪われるのでは、という懸念が広がった時期もある。今やそうしたブーム初期の過度の期待や恐れは収まり、必要な場所でAI技術が着実に浸透しているように見える。
ソニーCSLの北野宏明社長は日本のAI研究をリードしてきた人物であるとともに、システム工学の考え方や解析手法を用いて生命現象を理解する「システムバイオロジー」の第一人者でもある。AIやロボットの基礎的な研究開発を加速させるためにソニーが2020年に設立したAI研究開発の専門組織「ソニーAI」のCEO(最高経営責任者)にも就任している。
北野氏の目に「AIの現在と未来」はどう映っているのか。『アフターデジタル』などの著書を持つIT評論家の尾原和啓氏が話を聞いた。
尾原和啓氏(以下、尾原) ディープラーニングによる第3次AIブームの到来から約10年が経過しました。様々なAI関連ビジネスが台頭してきた現状を、北野さんはどう評価していますか。
北野宏明氏(以下、北野) ディープラーニングや、それに強化学習を組み合わせた深層強化学習が技術的なブレークスルーであったことは間違いありません。今後も、技術の進歩によって今まで私たちが持ち得なかったような能力を持つソフトウエアが普及していくのは明らかです。
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