メタバースの本格展開を発表したオンラインゲーム大手のグリー。単なるバズワードに終わらせず、SNSなどのモバイル市場に続く大きな経済圏として成長させるには何が必要になるのか。メタバース事業を手掛けるグリーの子会社REALITY(東京・港)社長のDJ RIO氏(荒木英士氏)にIT批評家の尾原和啓氏が聞いた。
<前編はこちら>
尾原和啓氏(以下、尾原) 18年のサービス開始当初は順調な滑り出しでしたか。
DJ RIO氏(以下、DJ RIO) 顔を出さずにアバターとなって、おしゃべりするなんていうことが果たしてどれだけ受け入れられるだろうかと疑問に思われていた部分はありました。それにライブ配信自体も、今でこそ相当大きくなっていますが、当時はまだごく一部のニッチなサービスだと見なされていました。でも、私たちには「これから多くの人はみんなアバターで生活していくはずだ」という長期的な見立てがありました。リリースしてから3年ですけど、今、世の中が追いつきつつあるなと実感しています。
今後さらにメジャーなものになっていくと信じてやっています。例えば15年ぐらい前にSNSが普及しだした頃、自分の顔写真をネットにアップするなんて、一部の人だけだといわれていましたが、現在は当たり前になっています。ライブ配信もそうですし、人間の慣れは変化します。
若い人の価値観も世界中で変わってきています。ここ5~6年で変わったところでいうと、複数アカウントを持つことが挙げられます。以前なら、Twitterなどで複数アカウントを持つのは日本のユーザーぐらいでした。ところが、スマホネーティブと呼ばれる、当初からiPhoneなどスマホやSNSに親しんだ人たちが大人になると、自然と海外でも複数アカウントを持つ人が増えてきました。
尾原 そのような流れがこのまま3次元の世界で体験できるコミュニケーションにもつながるかもしれませんね。実は、REALITYのユーザーにClubhouseやTwitterで出会い、何人かにお話を聞きました。すると、みんなが口をそろえて「世界が優しい」と言うんです。女性ユーザーは「安心できる」とも言っていました。REALITYは柔らかく居心地のよい世界を作ってるんですね。これはなぜでしょうか。
DJ RIO ユーザーさんからのそうした声を聞いて、ありがたいと思っています。意図してやった部分と、結果としてそうなった部分の両方があります。意図した部分は、最も初期におけるコミュニティーの空気です。REALITYが始まったときは、有名VTuberさんのライブ配信を見るためのアプリとしました。その次に、ごく一部、こちらから選定した数十人にアプリを渡して、その人たちだけが配信できるようにしました。そこから徐々に一般のユーザーにも開放していきました。
最初にライブ配信を行った有名VTuberさんたちは、彼ら彼女らならではの空気のつくり方がありました。例えば「ライブ配信に来てくれた人には挨拶しておもてなしをする」「来てよかったと感じてほしいから、ホスピタリティーを高くする」といった形です。すると、その次に始めた配信者さんも、その空気をまねすることが普通になっていく。結果的に、よい意味での暗黙の了解が作られていったわけです。
意図していない部分は、基本的に全員がかわいい顔、かっこいい顔になるという点にあると思っています。最初のコミュニケーションとして「かわいい」「かっこいい」「尊い」といった褒め言葉がメジャーになっていくんですね。それが広がるので、全体として肯定感が高いコミュニケーションになります。
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