人々がコンテンツを生み出し、仮想通貨で価値を交換し、消費する。ネット上に新たな市場をつくる場として「メタバース」への期待が高まっている。国内では2021年8月にグリーがメタバースへの本格参入を発表し、話題となった。グリー子会社REALITY(東京・港)の社長であるDJ RIO氏に尾原和啓氏が迫った。
3Dの仮想空間上で、分身となるアバターを介して他のユーザーとコミュニケーションを取り、コンテンツを売買するなどの経済活動もできる。そんなネット経済圏を生み出す新たなサービスとして「メタバース」というキーワードが注目を集めている。
その大きなきっかけは、米フェイスブックがSNSの先に狙う市場として、21年8月にVR(仮想現実)用のワークスペース「Horizon Workrooms(ホライズン・ワークルーム)」を発表したこと。その一方で日本でもオンラインゲーム大手のグリーが、メタバースに本格参入し、今後2~3年で100億円規模の事業投資をすると発表して話題になった。世界で数億ユーザーを目指すという。
グリーのメタバース事業を手掛けるのは、子会社のREALITY。アニメのようなアバターを作成し、誰もがVTuber(バーチャルユーチューバー)のようにライブ配信ができるアプリ「REALITY」を展開してきた。同社のビジョンである「なりたい自分で、生きていく。」を実践し、アバターとして今回の対談に応じたREALITY社長のDJ RIO氏(その実体は荒木英士社長)に、IT評論家の尾原和啓氏が聞いた。
尾原和啓氏(以下、尾原) バーチャルライブ配信やメタバースなどの事業が拡大期に入ってきたといわれています。こうした分野を狙った背景を改めて教えてください。
DJ RIO氏(以下、DJ RIO) インターネットのメディアは、静的なテキストから始まり、画像や動画、さらにライブ配信へと進化しました。リッチ化とリアルタイム化が大きなトレンドとなっています。ネット上のコミュニケーションに費やす時間もこの10~20年で激増しています。今や仕事もオンラインが当たり前の時代です。
今後、VRの機器が普及していくと、より没入感の高い3D空間でインターネットに接続するようになります。現在のコミュニケーションの主流であるTwitterやLINEなどでは、丸いアイコン画像とニックネームが自分を表すものですが、3D空間のコミュニケーションが当たり前になったとき、それだけでは情報量として不十分です。
身ぶり手ぶりの動作もできる3D空間では、体全体で自分を表現するアバターが必要となってきます。実写のようなアバターの人もいれば、フィジカルな肉体とは離れた姿のアバターを使う人もいるでしょう。コロナ禍でテレワークが広がったように、3D空間でアバターを使ってコミュニケーションをしたり、仕事をしたり、何かしらの表現活動を行ったりすることは、一部のクリエイターだけでなく、近い将来、何億人もの人がするようになると考えています。
尾原 確かにコミュニケーションの主体は、テキストから画像、動画、そして3Dへと変化しています。昨今、メタバースという言葉が流行しているのは、何かしらの変曲点を超えたことが背景にあるのでしょうか。
SNSの延長線上にメタバースがある
DJ RIO いくつかの業界で「メタバース」という言葉を使うことが便利だ、という状況が発生していると思っています。まず1つはゲーム業界です。ゲーム業界はこの10年ほど市場規模の成長がすさまじく、約18兆円の市場規模があり、エンターテインメント分野の中では最大の産業になっています。そのような市場規模にもかかわらず、ゲーム企業というのはずっと評価額や時価総額の評価が低いケースが多かったのです。投資家からすると、「ヒットドリブンで、当たるか当たらないか読めない」と。
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