個人の才能やスキルによる創作物や成果物で収益を得る「クリエイターエコノミー」が今後広がっていくと言われている。そうした個人の力を軸とした注目のサービスが、日本のマンガ業界から飛び出した。講談社が進める新サービスにIT評論家の尾原和啓氏が迫った。
講談社は2021年6月1日、クリエイター支援や育成を目的とする開発組織「講談社クリエイターズラボ」を新設した。「すべてはクリエイターのために」を合言葉に、マンガや小説の作家、イラストレーター、ゲーム制作者など幅広いジャンルのクリエイターを支援する。
その起点となったのは18年4月にスタートしたマンガ投稿サイト「DAYS NEO」だ。投稿者が編集者から届いたメッセージやプロフィルを見て、自分の担当を「逆指名」できる。「週刊少年マガジン」「モーニング」など講談社の全マンガ媒体を含む24誌280人の編集者が参加している。サービス上で読者は作品を読むと同時に、作者と編集者のやり取りも楽しめる。毎月500作品以上の新作、累計でおよそ2万作品が投稿された。現在では800組以上のマッチングが成立し、約80人が連載や読み切りなどで活躍している。
DAYS NEO立ち上げの経緯やその先の狙いは何か。講談社クリエイターズラボやDAYS NEOをけん引する講談社の第4事業局の鈴木綾一クリエイターズラボ部長に、尾原氏が詳細を聞いた。
尾原和啓氏(以下、尾原) クリエイターズラボの設立おめでとうございます。マンガ投稿サイトの「DAYS NEO」はもちろん、 20年9月にはインディーゲームの開発者を支援する「講談社ゲームクリエイターズラボ」も開始しています。講談社がこうした新しい事業を開始した背景から教えてください。
鈴木綾一氏(以下、鈴木) もともと野間省伸社長がデジタルに対して、出版界のリーダー的な役割を果たしてきたという背景があります。自社で先駆的に取り組もうと、iPadが発売となった10年に京極夏彦氏の新刊小説を紙と同時に電子で発売するといったことをしてきました。
そうした中で18年3月に、社内のマンガ誌を1つにまとめたマンガアプリ「コミックDAYS」を始めました。僕はその立ち上げメンバーでした。15年ほどずっとマンガ編集の仕事をしてきましたが、中国、韓国とアプリの先進国に行って中国テンセント、韓国ネイバーやカカオと先進企業について勉強しました。
尾原 コミックDAYSは講談社のマンガ雑誌19誌を月額960円(税込み)で読めるという、マンガ雑誌のサブスクモデルとして画期的なものです。読者にとってはかなりお得な仕組みですが、各雑誌の編集部から「うちの売り上げが下がるじゃないか」といった反発はなかったのでしょうか。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー