前編ではデジタルと組み合わせながら成長を目指すと共に、セレクトショップとしてのキュレーション力や「人とのつながり」を重視していると語ったビームスの設楽洋社長。後編は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する考え方や、変革の時代を生きるマーケターに向けたアドバイスを聞いた。

オンライン会議を通してIT評論家の尾原和啓氏と対談するビームス社長の設楽洋氏
オンライン会議を通してIT評論家の尾原和啓氏と対談するビームス社長の設楽洋氏

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競合は他社ではなくインフルエンサー

尾原和啓氏(以下、尾原氏) 設楽さんは、もう10年ほど前に「コトから人へ。カルチャーショップからカルチャーコミュニティへ」とおっしゃっています。世の中が少しずつ変化している中、多彩な企業とのコラボを含め、みんなが楽しめる軸をつくるために、どんなことを意識しているのでしょうか?

設楽洋氏(以下、設楽氏) 基本的には、人たらしです(笑)。ただし、個人でも会社の立場でも、プロジェクトを主導するときは「誰かの人生の脇役を楽しむ」という意識が重要だと思っています。

 セレクトショップはお客様の代わりに情報や商品を集めて、絞ってあげるのが仕事です。洋服も、誰もがクローゼットの中に1つのブランドだけがあるということはないはず。セレクトは、自然な自分の感性から自分の好きなものを集めてきますが、その集めたものをお客様の代わりにさらに絞るお手伝いをする。そして、お客様のハッピーにつなげることが役目なので、自分たちが主役ではありません。

 それを形にするためには、様々なジャンルの人たちのキャラや個性、嗜好を知っておかなければ提案できない。そこで、デジタルを使って、相互の情報交換ができるようにしたいなと思っています。

尾原氏 脇役としてお客様から好かれ、その人が変わりたいと思うような「人たらし」になっていかなければならない。同時に「この指止まれ」のトレンドも作っていくという……。その価値軸は設楽さんから強烈に感じます。とはいえ、組織として多くの社員数を抱えていらっしゃいますよね。その社員の方の価値観は、どうやって変えているのでしょうか? 多分、他の会社の方もそこが多分一番知りたいところだと思います。

設楽氏 一番大きいのは、入り口のところです。ビームスの場合、社員候補はビームスが大好きなお客様という立ち位置から入ってきます。またビームスにはいろんな人間がいるわけですが、入社すると一つの形ではなく、多様な形での「ビームス風」っていうものに染まっていくんです。これを「伝染」と言っていますが、この「伝染」は会社の枠を飛び越えて、お客さんにまで広がっていく。

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