新型コロナウイルス感染症拡大の影響でアパレル業界全体が苦戦する中、セレクトショップのビームス(東京・渋谷)は、積極的に異業種とのコラボを進め、従来の領域にとどまらない変化を目指している。その先の狙いは何か。ビームス社長の設楽洋氏にIT評論家の尾原和啓氏が直撃した。
1976年に創業し、2021年に45周年を迎えたビームス。コロナ禍であらゆる店舗が変革を求められる中、同社はデジタル施策を含む、企業など外部との連携を推進してきた。例えば、2020年12月にはVR(仮想現実)イベント「バーチャルマーケット」にバーチャル店舗を出店。ほかにも同社は19年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士、野口聡一さんの国際宇宙ステーション(ISS)滞在用被服の製作を手掛けており、21年1月にはその被服を基にしたアパレルアイテムを発売。21年5月26日には、動画配信サービスNetflixとのコラボ商品も発表した。これまでにない変化の時代の中で、ビームスは何を目指していくのか。
あふれる情報から絞り込む役割が求められている
尾原和啓氏(以下、尾原氏) ビームスさんは学生運動やバブルなど時代の大きな変化をずっと駆け抜けて、常に新しい文化をつくってきました。withコロナの時代をどのように見ていらっしゃるのでしょうか?
設楽洋氏(以下、設楽氏) 僕は1951年生まれで、今年70歳になりました。25歳のときにビームスを立ち上げ、21世紀になった2001年に50歳。コロナ禍にかかわらず、自分が今まで生きてきた中でも小さいトレンドの変化はありましたが、この10年は産業革命と言ってもよいほどの激変ぶりでした。
設立当初の1976年には、「セレクトショップ」という言葉もありませんでした。当時は、男の子は米国、女の子はフランスのパリに憧れるという世代。日本の若者文化を変えたいという思いで、米国の生活を売る店という格好で始まりました。
みんなが情報に飢えていました。ビームスの創業と同時期に米国の生活を紹介するファッション誌の「POPEYE(ポパイ)」が創刊になりましたが、それまでは情報がなく、まずは訳知りの人から探さなければならなかった。だからこそ、海外へ行き、みんなが知らないようなものを集め、海外の生活や流行を見せてあげることが当時のセレクトショップの役目でした。
尾原氏 ある種、メディアとしての役割も持っていたわけですね。
設楽氏 今は逆に、モノと情報があふれすぎているために、何が正しいか分からないという若者が多いように思います。なので、今のセレクトショップの役目は、数ある情報の中から絞っていくことだと考えています。
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