競輪アプリ「TIPSTAR(ティップスター)」の提供を開始したミクシィ。IT評論家の尾原和啓氏によるミクシィ木村弘毅社長のインタビュー後編では、サービス上で見えてきた成果のほか、「プロスポーツチームのアリーナ経営も目指していく」といった今後の方針について聞いた。
<前編はこちら>
高年齢男性のマーケットへ若年女性を呼び込む
尾原和啓⽒(以下、尾原氏) 前編ではティップスターを開始するに至った経緯をお聞きしました。実際の運用を始めてみて、どのような実感を得ていますか?
木村弘毅氏(以下、木村氏) 新しいファン層の開拓につながっていると思います。特徴的なのが、若い世代、特に女性に広がったことです。競輪ファンの平均年齢は60歳以上で、かつ男性比率が95%以上といわれています。しかし、ティップスターの場合はユーザーの約半数が女性で、平均年齢が40歳以下。ボリュームゾーンは30代なので、若返りと女性の獲得を実現させることができています。
尾原氏 平均年齢を20歳以上若返らせたのは、本当にすごいことだと思います。その要因とは何だったのでしょうか?
木村氏 無料で遊べるフリー・トゥ・プレーを導入したことが大きいと思います。モバイルのソーシャルゲームでは当たり前ですが、基本的に誰でも無料で遊べる仕組みをつくりました。今までの公営競技はお金を賭けなければ参加ができませんでしたが、ティップスターではその障壁を下げました。
ベテラン競輪ファンのちょっと小難しい解説ではなく、若い出演者がワイワイ実況しているのも効果的でした。裏話としては、若くてきれいなお姉さんを起用すると男性ユーザーが来てくれるのではないか、というもくろみがあったんです。しかし、蓋を開けてみれば、多くの女性ユーザーが登録してくれました。恐らく、ベテランが解説している実況だと、女性は「私、何か間違ってるんじゃないだろうか」と不安になると思うんです。若い女性を起用したことで、自分たちが参加しても良いサービスだと感じてもらえたのではないでしょうか。
サイクルスポーツはよみがえる
尾原氏 公営競技は競馬やオートレースなどもありますが、その中でも競輪に着目されたのはなぜでしょうか?
木村氏 様々な公営競技のネット化率を見ていたときに、圧倒的に低かったのが競輪でした。競輪は全国の多数の自治体がそれぞれバラバラに経営をしており、システムの投資やマーケティングが分散し、ネット販売を伸ばすことに投資ができていませんでした。過去を振り返ってみると、競馬より競輪のマーケットが大きかった時代もあった。つまり、コンテンツ自体のニーズがないわけではないということです。であれば、システムやマーケティングにきちんと投資して、見せ方や触れ方を変えていけば、競輪は必ず再生すると思いました。
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