「食の進化」を通して人と社会の変化を追う連載の第8回。今回は、2012年に鉄加工からピクルス製造へと事業転換した異色の会社、大阪府泉佐野市にあるNSWを取り上げる。一から有名ピクルスブランドへ成長してきた鍵は、地方創生、健康・美容、インスタ映えなど、時代の流れを読み取り、うまくビジネスに生かすことにあった。

NSWが手掛ける「いずみピクルス」。カラフルな中身が見えるおしゃれな瓶詰容器
NSWが手掛ける「いずみピクルス」。カラフルな中身が見えるおしゃれな瓶詰容器
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 大阪の大丸梅田店のデパ地下にあるNSWのピクルス直営店に入ると、多種多様のカラフルな瓶詰めピクルスに魅了される。これらを作り出したNSWの前身は、鉄加工業を営む町工場。2013年、4代目社長に就任した西出喜代彦氏が、ピクルスの健康効果と市場の成長性を見据え、鉄加工から食品メーカーへの事業転換を決断した。

 試行錯誤の末に和風の味で仕上げたピクルスは、12年に発売するや、物産展などで人気を集め、大手百貨店がお中元やお歳暮ギフトにも採用した。現在は「いずみピクルス」のブランド名で、地元の泉州野菜や果物を中心に使い、水なすピクルス、長いもピクルス、玉ねぎピクルス、フルーツピクルスなど、商品ラインアップは約100種類に及ぶ。

 現在までの10年弱の間、NSWは商品自体やサービスとしても多くの「業界初」を実現してきた。例えば、電子レンジで温めて食べられる「チンする!ピクルス」、「ピクルスの素」の定額通販、香りに着目したアロマドレッシング、キャラクターの型抜きを使ったピクルスなどだ。

カエルのキャラクターをかたどったピクルス(写真/筆者)
カエルのキャラクターをかたどったピクルス(写真/筆者)
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 また、「ふるさと名物大賞」(15年)、「OMOTENASHIセレクション大賞」(17年)、「優良ふるさと食品中央コンクール新技術部門農林水産省食料産業局長賞」(19年)など、数多くの賞にも輝いた。こうした斬新な商品とサービスが、ピクルスや漬物市場に新しい風を吹き込んでいる。

 近年のピクルス市場は、用途や利用シーンが、酒のつまみ、サラダやおやつ、お土産へと拡大し、少しずつ伸びてきている。その理由は「簡単、ヘルシー、おいしい、おしゃれ」だという。この市場拡大に、NSWが果たした貢献は大きい。全くの異業種である鉄加工業からの事業転換で、どのように成功にたどり着いたのか。

鉄から食へ、地域創造ファンドの支えと鍛え

 遡ること10年前、鉄加工業を縮小する方向にあった中で、もともと農園への憧れがあった西出氏の父(3代目社長)は、植物工場の事業化を検討し始めた。大学の研究室へ相談に行くなど事業プランを練ったが、成功の可能性は低いと断念。その過程で目を付けたのが、大阪泉州の特産品「水なす」だった。

 「加工品として水なすの漬物が当地から販売されていて、私も上京時代、お世話になった方へお中元として贈ったことがあった」と、4代目の西出喜代彦氏。しかし、調べてみると、水なすのぬか漬けは売れていたが、それ以外の「ぬか漬け」の売れ行きがよくなく、「臭いが苦手」「塩分が多い」「手間がかかる」などを理由に敬遠する人が多いことを知った。

 そこでアイデアとして思いついたのが、大阪泉州の水なすをピクルスとして加工・販売することだ。「酢漬けのピクルスにすれば、健康志向にもマッチする」(西出氏)と思い立った。母や姉など家族の手伝いで試作を重ね、昆布だしなどを使って和風ピクルスに仕上げた。

大阪泉州の水なすなど、特産品を生かした
大阪泉州の水なすなど、特産品を生かした
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