人への感謝や応援の気持ちを、「食」を通じて届けるサービスが人気を呼んでいる。スタートアップのGigi(福岡市)が展開する「ごちめし」「さきめし」「びずめし」だ。CEO(最高経営責任者)の今井了介氏は、実は日本有数の音楽プロデューサーの1人。音楽プロデューサーならではの斬新な発想で、飲食ビジネスが変わろうとしている。
2018年に設立されたGigi(福岡市)が提供する飲食サービスは、従来の発想とは大きく異なるものだ。人々の感謝や応援の気持ちを食事とともに届けることを目的に、飲食店とユーザーをつなぐ。
19年10月から開始した「ごちめし」を皮切りに、20年3月からは「さきめし」、21年2月から「びずめし」と、相次いで斬新なサービスを追加している。それぞれどんなものか、まず、見ていこう。
【ごちめし(19年10月~)】
アプリやWebサイトを通じて、飲食店のメニューを友人などにプレゼントできるサービス。人から人への「ありがとう」「頑張ってね」「応援しているよ」などの気持ちを「ごちる(ごちそうする)」という行為に換え、届けられる。お金に余裕のない人を助けるだけではなく、遠方に住んでいる知り合いや、予定が合わなくてなかなか会えない友人の誕生日にプレゼントするなど、さまざまな使い方ができる。
【さきめし(20年3月~)】
「ごちめし」のサービスを始めた直後、新型コロナウイルス感染症の流行で飲食店が苦境に立たされた。そこで、誰かに食事をプレゼントできるごちめしの機能を活用してリリースしたのが「さきめし」。自分が応援したい飲食店へ「また食べに行くからね」「頑張って乗り越えようね」という気持ちを込めて食事代を先払いし、後日、コロナ禍が落ち着いたタイミングで店を訪れるという流れを作った。コロナ禍下で、支援者と飲食店をつなぐサービスとして話題が広がった。
【びずめし(21年2月~)】
オフィスのあるエリア、出張先、リモートワーク時の社員の居住エリアなど、どこでも「びずめし」登録店を“社食”として利用できるサービス。企業の福利厚生として活用できるうえ、登録した飲食店の売り上げ向上にも役立つ。つまり、企業、飲食店、社員にとって「三方よし」の新しい社食サービスだ。
これらのサービスが多くの人からの共感と支持を集めた。特にコロナ禍下における店舗への支援ツールとして、各地の自治体や商工会、また飲食以外の業界と数多くの協業プロジェクトが立ち上がった。
飲食店だけではなく、医療従事者への支援にも活用された。例えば文化放送(東京・港)は、医療従事者を応援するためにGigiと共同で「食事で医療従事者を応援する」というコンセプトの下、「YOU ARE THE BEST ~医療従事者・飲食店ありがとうプロジェクト」(21年3月1日~7月31日)を実施した。首都圏にある飲食店で利用可能な電子チケットを、医療従事者を応援する人からの寄付金と、スポンサー企業からの支援金で購入。その電子チケットを本プロジェクトに登録した医療従事者が使えるようにした。
ごちめし、さきめしのサービス開始以降、20年10月末までの参加店舗総数は1万3000店、通算利用回数は14万2000食、流通総額は3億9000万円を超えるほどに成長している。その後も拡大が続いており、参加店舗数は21年7月に全国で1万6000店を突破。こうしたGigiのサービスは、20年度のグッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」を受賞し、また、さきめしは日本ギフト大賞2020の緊急特別賞「飲食店応援賞」も受賞している。
では、なぜGigiはこのような新しいスタイルの飲食サービスを生み出せたのか。
サービス開発のきっかけは東日本大震災
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