「食の進化」を通して人と社会の変化を追う連載の第2回。今回はオフィス空間と食施設を一体化した、ある街の工務店を題材にする。リモートワークなどが広がるwithコロナ時代、維持することが難しくなってきた社員食堂の新たな可能性が見えてきた。
大阪北部の緑と丘が広がる北摂エリアに小さな工務店がある。従業員12人、専属大工20人のKJ WORKSだ。そのオフィスは一風変わっている。カフェや食堂、ベーカリー、雑貨店、図書館などで構成されるエリア「くらしの杜」の一角にあるのだ。そこには、withコロナ時代に求められるオフィスの在り方、食と働く環境をつなぐ大きなヒントがある。
KJ WORKSは大阪府箕面市にある木の家づくりを行う地域工務店だ。KJ WORKSという社名は、家族みんなが喜ぶ暮らし(K)を実現(J)する木の家づくりを仕事(WORKS)とする意味合いが込められている。福井綱吉代表が、1979年ごろに立ち上げた。
福井氏は、大阪北部で開発が進む国際文化公園都市(愛称は彩都)の街づくりをきっかけに、熊本県阿蘇の「小国杉」に出合った。強度に優れ、艶と粘りのある材質にほれ、KJ WORKSの居心地のいい家づくりに欠かせない素材となった。無垢(むく)の木としっくいを使うことで、住む人や訪れる人が閉塞感なく、無意識に気持ちがくつろげ、いつまでも居たくなる。そんな空間づくりを手がけてきた。

しかし、当初は思ったほど普及しなかった。事業はピンチの連続だったが、幸い多くの仲間に助けられ、存続してきた。そんな経験から、もっと社会に、人の暮らしに役立つ「場」を立ち上げたいと思うようになり、2005年、地域の人々が集う場として、くらしの杜をオープンしたのだ。
工務店オフィスにカフェを併設
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