パッケージデザインはマーケティング活動における重要な要素だ。パッケージデザインの制作・評価に携わって20年の著者が、経営者やマーケター、ブランド担当者が知っておくべきパッケージデザインの鉄則をまとめた新刊『売れるパッケージデザイン 150の鉄則』(小川 亮著、日経BP)から、特に重要なポイントを抽出した連載の第11回。
コンセプト伝達、ブランド構築、イノベーション
2018年に経済産業省と特許庁が発信した「『デザイン経営』宣言」は、デザインを経営に取り入れて競争力を高めていこうとする考え方です。
「『デザイン経営 』は、ブランドとイノベーションを通じて、企業の産業競争⼒の向上に寄与する。」と書かれている宣言書には、ブランド構築に資するデザインとイノベーションに資するデザインの2つが描かれており、デザインを活用していくことでブランド構築とイノベーションを促進していきましょうと提案しています。世界で躍進している企業がデザインを競争力の源泉として活用していることを見ると、日本企業が競争力をつけるのにデザインを活用していこうというメッセージを国が投げかけるのは、とても大切なことだと思います。
一方で、デザイン経営をパッケージデザインの制作や活用で考えたときにはどのように整理していったらいいでしょうか。
確かにデザインはブランドを構築する中心的な要素です。いったん形にしてみるというデザイン思考やデザインドリブンイノベーションの考え方にも見られるように、デザインはイノベーションをリードするツールでもあります。しかし、実務的な視点で見ると、やはり商品のコンセプトや魅力を伝える情報伝達力と審美性によって、商品を売るという基本が大事だという気がします。
コンセプト伝達、ブランド構築、イノベーションの3つのフレームでパッケージデザインを考えてみると、とても整理がしやすくなります。それぞれにおいて、業務の流れや組織、ミッション、意思決定、内部化・外部化といった仕組みをつくり上げていくことで、デザインを経営に活用できる組織に近づいていきます。例えばコンセプト伝達であれば、売れるデザインをどうつくるかという、まさに本書のテーマになります。
ブランド構築であれば、ブランドエクステンションやリニューアルを繰り返しながら、ブランド資産をいかに蓄積し、高めていくかがゴールになります。イノベーションであれば、開発の初期段階でプロトタイプとしてのパッケージデザインをいかにしてみんなが活用するかといったテーマが重要になります。