パッケージデザインはマーケティング活動における重要な要素だ。パッケージデザインの制作・評価に携わって20年の著者が、経営者やマーケター、ブランド担当者が知っておくべきパッケージデザインの鉄則をまとめた新刊『売れるパッケージデザイン 150の鉄則』(小川 亮著、日経BP)から、特に重要なポイントを抽出した連載の第8回。
戦略を理解した上でデザインの方針を決める
パッケージデザインを制作する際には、ターゲットをイメージし、伝えるべきベネフィットやデザインの世界観などをまとめてデザインの制作に入っていきます。しかし、ここでもう1つ大切なのが、戦略との整合性です。この章ではデザインと戦略の関係性を、できるだけ分かりやすく紹介していきます。たとえ素晴らしいパッケージデザインが出来上がったとしても、戦略に合っていないと売れるパッケージにはなりません。
戦略とは経営の世界でよく使われる「競争にどう勝つか」という考え方です。企業経営においては戦略のことを「中長期的に、まねされない利益を生み出す仕組みや戦い方」というニュアンスで使うことが多いと思います。学術的には様々な定義や歴史がありますが、ここでは割愛します。
「こういうときは、こういう戦い方をすると負けにくいよ」とか「勝てる可能性が高まるよ」という先人の教えをまとめてくれているのが戦略論なのです。上手に先人の知恵を学び、デザイン制作の方針に落とし込むことが大切です。
これがパッケージデザインとどう関わってくるかというと、場合によっては競争相手のまねをしていいときもありますし、競合相手も含めてみんなで同じようなデザインにしたほうがいいときもあります。競争相手が巨大でとても勝てそうにないのか、少しは勝ち目がありそうかでも、戦い方は異なります。戦い方が異なればデザインもその戦い方に準じるのです。
経営学の言葉で「組織は戦略に従う」という言葉がありますが、同じようにデザインも戦略に従います。とはいえ戦略そのものが具体的なデザイン案を教えてくれるわけではありません。「どういうことをしたほうがいいか、どういうことをしてはいけないのか」という感じで、デザインを制作する立場からすると少しぼんやりはしているのですが、正しい道筋を教えてくれるのです。そして売れる確率を高めてくれるのです。
例えば、今回の商品は広告にお金を使うことをやめて、販売してくれるお店へのマージンを厚くするという戦略を選んだとします。この場合、広告を見て消費者が店頭に買いに来ることは少なくなりますが、販売店は競合商品よりあなたの会社の商品を売ったほうが利益が出るので、積極的にあなたの会社の商品をお客様に説明してくれます。これをプッシュ戦略といいます。この場合、パッケージデザインはどのようなデザインにするのがいいでしょうか。この答えは後ほど紹介しますが、こういった戦略を理解した上でデザインの方針を決めることはとても大切なことなのです。