パッケージデザインはマーケティング活動における重要な要素だ。パッケージデザインの制作・評価に携わって20年の著者が、経営者やマーケター、ブランド担当者が知っておくべきパッケージデザインの鉄則をまとめた新刊『売れるパッケージデザイン 150の鉄則』(小川 亮著、日経BP)から、特に重要なポイントを抽出した連載の第5回。
学習データから好意度を予測
評価の最先端技術にAI(人工知能)による評価があります。AIは大量の学習データから好意度の高いパッケージデザインの特徴を見つけ出し、ある画像が与えられたときにどの程度好かれそうかを予測します。プラグでは2015年より蓄積してきた学習データを活用し、東京大学との共同研究を通じて、AIによるパッケージデザインの評価サービスを実現しました。
あらかじめ用意された590万人(2020年10月時点)のパッケージデザイン評価データを基に、ディープラーニングを活用し、検討中のデザイン案を評価する仕組みです。WEB上にデザイン画像をアップすれば、セグメント別のパッケージデザインの好意度、好意度に影響を与えている場所の特定、19のデザインイメージ、好意度のばらつきを予測できます。わずか数十秒で、高い精度の予測が可能です。
従来の調査では、WEB調査で5案程度、会場調査では2~3案程度しか調査にかけることができませんでした。そのため、案を絞り込む過程で、売り上げを高める可能性のあるデザイン案が客観的な評価を得ないまま、捨てられてしまうことがありました。AIを使うことで多数のデザイン案をスピーディーに評価することができるため、すべてのデザイン案を評価することも可能です。
また、従来の調査に比べて圧倒的に速く、コストも抑えられるため、デザイン開発に余裕をつくり出すことができます。調査対象者がデザイン案をWEB上に公開してしまうような情報漏洩のリスクもありません。たとえ1回目の評価が低くても、世に出したいデザインを工夫して何度もAI評価を繰り返すことで、デザインの品質を高めるという、新しいデザイン開発手法が可能になります。
評価ができるということは、今後、デザイン生成の分野でもAIが活用される可能性があります。AIがデザイン生成の一部をサポートすることで、デザイナーは煩雑な作業から解放され、本来の創造的な仕事にもっと集中することができるようになるでしょう。
このAIを使ったパッケージデザインは、既にカルビーやネスレ日本から発売されるなど、多くの企業で活用が始まっています。現段階ではデザイン案を初期段階でスクリーニングするという活用方法が中心ですが、今後はデザイナーの人材教育やイノベーターの評価の予測など、従来の調査方法では不可能だった活用場面が増えていきそうです。