3度目の映像化にして角川春樹自身がメガホンを取った『みをつくし料理帖』。彼が映画に戻ったのは実に10年ぶり。背中を押したのは天狗(てんぐ)の化身と妻だった。そして、「敗れざる」男、角川が考える編集者の流儀とは。メディア界の風雲児、連載最終回。
【第2回】 「父のスケープゴートに」 逆境が生んだ起死回生のヒット
【第3回】 「映画の成功、逮捕、退社」 固く結ばれた北方謙三との縁
【第4回】 時代小説で女性ファン増やす 作家・髙田郁との出会い
【第5回】“鬼才”の流儀 天狗のお告げと妻の後押しで再び映画へ ←今回はココ
大失敗を経て“角川春樹全面解禁”
角川春樹は『みをつくし料理帖』の第1稿を読んだときから、映画化を考えていたという。
「映画にしやすい、映像にしやすい小説っていうのがあるんです。そして(連続ドラマが作れる)テレビと違って、映画には時間的な制約がある。趣味で作るのは別にして、ビジネスを考えれば2時間前後が限界。その中に入らなければならない。みをつくし料理帖はそれに当てはまっていたんです」
みをつくし料理帖は、2012年と14年にテレビ朝日で、17年と19年にNHKでドラマ化されている。
今回の映画化は3度目の映像化となる。
「テレビというのは、視聴率というものがあるので、全方位外交で作らなければならないんです。全方位外交に目を配ると、あれはいけない、これはいけないということが多くなる。一方、映画っていうのは、良くも悪くもプライベートフィルムなんですよ。今回は“角川春樹全面解禁”で行くことにしたんです」
“全面解禁”という大仰な言葉を使うのは、角川が監督を務めるのは09年の『笑う警官』以来だからだ。
『笑う警官』は佐々木譲の同名小説を原作としている。
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