
カード国際ブランド運営会社の1つ、米ビザ(Visa)傘下の日本法人ビザ・ワールドワイド・ジャパン(東京・千代田)が、「Visaのタッチ決済」と呼ばれる非接触(タッチ)決済の普及に向け、日本国内で攻勢を強めている。これまで事実上、手つかずの公共交通機関にも採用例が出始めた。ビザ・ワールドワイド・ジャパンの普及への取り組みを追った。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、クレジットカードの世界で一般のカード会社とは位置付けが異なる。会員(ユーザー)にカードを発行する業務(=イシュイング)や加盟店を開拓する業務(=アクワイアリング)は一般のカード会社に任せ、「Visa」ブランドの利用をカード会社に認める代わりに、ロイヤルティーを得るのだ。Visaブランドのカードの利用が増えれば自社の収益増につながるため、カード会社と協力して普及と利用促進に注力している。
そんなビザ・ワールドワイド・ジャパンが今、普及に最も力を入れているのが「Visaのタッチ決済」だ。タッチ決済対応マーク入りのクレジットカードやスマートフォンなどのデバイスを、ユーザーが店頭の専用読み取り端末に文字通りタッチするだけで、決済が完了するというもの。日本では、決済額が1回当たり1万円までならサインも暗証番号の入力も原則不要なため、現金はもちろん、他のキャッシュレス決済の手段と比べてもスピーディーに決済ができる。「Visaとしては、Visaのタッチ決済がキャッシュレス決済手段の究極のスタンダードになることを目指す」(ビザ・ワールドワイド・ジャパン コンシューマーソリューションズ部長の寺尾林人氏)という。
日本ではFeliCa方式のタッチ決済が先行
普及に力を注ぐ理由は、世界各国と比べて日本でのタッチ決済の普及が立ち遅れているからだ。ビザ・ワールドワイド・ジャパンによれば、Visaのタッチ決済は既に世界中の約200の国と地域で利用されており、全世界で実践されるVisaのクレジットカードを利用した対面決済のうち、3件に1件は既にタッチ決済だという。オーストラリアやニュージーランド、シンガポールなどではVisaのタッチ決済の普及率が80%を超え、英国、カナダなどでも60%を超えている。
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ところが日本では数年前まで、Visaのタッチ決済はほとんど普及していなかった。最大の理由は、ソニーが開発したFeliCa方式のタッチ決済が、「iD」「QUICPay」「楽天Edy」「WAON」「nanaco」などの電子マネーと呼ばれ、日本では先行して普及していたからだ。特に、JR東日本が運営する「Suica」に代表される交通系電子マネーが、モバイル対応を含めて日本全国に幅広く普及していたことが大きかった。
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