
1980年に日本で初めてVISAカードを発行した三井住友カード(東京・港)は、決済プラットフォームやデータ分析支援などで加盟店を確実に確保しつつ、スマートフォンを重視した会員向けサービスや機能でカードの利用頻度を上げる。いわばカード会社の正攻法で収益増を図り、名実ともにキャッシュレス決済の“主役”を目指す。
加盟店開拓と会員向けサービス向上の両方に積極的に取り組む三井住友カードの取り組みの中で、他のクレジットカード会社と一線を画しているのが、加盟店を開拓するため、新たな決済プラットフォームまで構築したことだ。GMOペイメントゲートウェイ、ビザ・ワールドワイド・ジャパン(東京・千代田)の2社と提携し、共同で構築した事業者向け次世代決済プラットフォーム「stera(ステラ)」が、それだ。
steraの実力の高さはサイゼリヤの採用が証明
steraは、小売店などの事業者に対して、リアル店舗での決済端末やECサイトでの決済システムの提供から、決済データを処理するセンター、処理をした決済データをsteraに対応した各事業者に届けるネットワークまで、キャッシュレス決済の過程で事業者サイドが必要とする機能を一気通貫でカバーし、提供するプラットフォームだ。
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例えば、リアル店舗はsteraの専用決済端末「stera terminal」が1台あれば、クレジットカード(ICチップ読み取り、磁気コード読み取り、NFC読み取り[タッチ決済]の3種類の手段が可能)はもちろん、交通系や「QUICPay」「楽天Edy」といった主要な電子マネーや、「LINE Pay」「楽天ペイ」「d払い」「PayPay」「メルペイ」「au PAY」といったQRコードによる決済にも対応できる。
複数の決済手段をまとめて決済できる端末などを提供するゲートウェイ事業者は他にも存在するが、steraの場合、「1台でさまざまな決済手段にワンストップで対応しているのに加えて、加盟店の業務効率化を支援する多彩な業務アプリケーションの利用も可能にし、加盟店側の手間を大幅に省いている」(三井住友カード アクワイアリング本部アクワイアリング統括部部長代理の植田真行氏)。
また、AndroidOSを採用しているため、POS機能やポイント決済対応機能など、三井住友カードや第三者企業が今後、開発する新たな機能を、機器を更新することなしに追加で搭載できる。
さらに、リアル店舗とECサイトを両方持つ小売り事業者の場合、通常ならばリアル店舗とECで決済システムが別々のところ、steraを導入すれば分断されている決済データを統合し、双方の取引履歴を1つの管理画面に表示できる。業務の効率化はもちろん、マーケティングへの活用も視野に入れられるわけだ。
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